配偶者が行方不明の場合、離婚をすることはできるのか?

離婚・家族関係の相談をお受けしていると、夫/妻との別居が長くなるなどして配偶者の行方が分からなくなってしまっている案件のご相談をお受けすることがあります。このような事案では、調査により相手方の行方が分かることもありますし、調査をしても相手方の行方が分からないケースもあります。

このような事案において、どのような調査を行うのか、調査の結果行方が分からない場合にどのような手段をとることができるのか、解説します。

目次

1 行方不明の方の住所の調査の方法
2 相手方の住んでいる場所は判明したが、回答がない場合
3 相手方が住民票上の住所地などに住んでおらず、行方不明の場合
4 相手方が既に亡くなっている可能性がある場合

行方不明の方の住所の調査の方法

 まず、住民票上の住所がわからないときの調査方法について、簡単に説明をさせて頂きます。

 配偶者と長い間連絡を取っておらず、今、どこに住んでいるのかわからないというようなケースでは、まず、配偶者の住民票上の住所を調べていくことになります。配偶者の住所は、ご自身と配偶者の現在の戸籍の「附表」を取得することにより、住民票上の住所を調べることができます。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住民票上の住所が記録されているものです。

 このようにして、住民票上の住所を調べることができますので、まずは、その住民票上の住所に手紙を出してみるなどして離婚などの交渉を試みることになります。これに対して返事をしてくれれば、離婚などの手続を進めていくことができます。

 しかしながら、以下のような理由により、返事を得ることができない場合もあります。

① 住民票上の住所地に住んでいることは明らかだが、返事をしてくれない
② 住民票上の住所地に住んでおらず、行方不明である(家はあるが、本人が住んでいないようなケースもあれば、家自体が存在しないようなケースもあります)
③ もうすでに亡くなっているはずだが、死亡届が提出されていない

 以上のような事態が起こってしまった場合、離婚などに向けての話し合いを進めていくことができません。このような場合、家庭裁判所の手続を利用する等して対応をしていく必要があります。

 なお、配偶者が住民票上の住所地には居住していないが、電話番号や勤務先が判明しているような場合には、弁護士会や裁判所からの紹介制度を利用するなどによって相手方の居住場所が判明することもあります。詳しくは、弁護士にご相談ください。

相手方の住んでいる場所は判明したが、回答がない場合

 相手方(配偶者)に手紙を出すなどしたが、返事がない場合、交渉を行うことはできないので、家庭裁判所の離婚調停(夫婦関係調整調停)を利用することになります。離婚調停の申立てを行った場合、相手方には、家庭裁判所から呼出状が送られることになります。手紙には応答がなくとも、家庭裁判所からの呼出状には反応するという方も一定程度、おられます。相手方が家庭裁判所に出頭すれば、話し合いをすることができます。調停の手続の流れは以下のリンク先をご覧ください。

 裁判所から「呼出状」が送られたにもかかわらず、調停に出席しない相手方もいます。この場合、どのように手続きを進めるかは裁判所によって異なりますが、何度か呼び出しを続けることが一般的かと思います。しかしながら、何度呼び出しを行っても相手方が出席をしない場合、調停の手続を進めることはできません。結局、調停は「不成立」となり、終了します。

 この場合、離婚をするためには、離婚訴訟を起こすしかありません。離婚訴訟では、相手方が出席しなくても、手続きを進めることはできます。ただし、相手方が欠席している場合、訴訟を起こした側(原告)で離婚に理由があることを証明しなければなりません。ご本人のみで離婚の訴訟の手続を進めていくことは難しいと思いますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

Q
相手方は裁判所からの呼び出しに応じないと思います。調停をすることなく、いきなり訴訟をすることはできないのでしょうか?
A

いきなり訴訟を起こすことも可能ではありますが、裁判所の判断により、調停手続きに回される(調停に付す)可能性が高いと思われます。
離婚事件では調停前置主義という制度がとられており、原則として、まず調停を申し立てなければならないこととなっています。調停を経ずにいきなり離婚訴訟を提起した場合、通常は、裁判所が、その事件を調停に回すことになります(付調停。家事事件手続法257条1項、2項)。訴訟を調停に付すかどうかの判断は裁判所が行いますので、実際の事案で裁判所がどのような判断を下すかはわかりませんが、一度も調停を経ていない場合、「調停に付す」という判断が出る可能性は高いと思われます。

 なお、「相手方が住民票上の住所地(又はその他の場所)に住んでいることは明らかだが、裁判所からの郵便の受け取りを拒否している」というような場合は、「付郵便送達」という手続きを利用することにより、裁判所が郵便を発送した時点で相手方に郵便が送られたとみなすことができる制度があります(民事訴訟法107条1項、3項)。この手続きを利用する場合、相手方住所地の現地調査などが必要になります。詳しくは弁護士にご相談ください。

相手方が住民票上の住所地などに住んでおらず、行方不明の場合

 相手方(配偶者)が住民票上の住所地に住んでおらず、調査をしてもどこに住んでいるのか判明しない場合、調停による離婚も難しいということになります。このような場合は、家庭裁判所に離婚の訴訟を提起し、「公示送達」という手続きを利用することにより離婚の成立を目指すことになります。

 「公示送達」は、簡単に説明すると、裁判所の掲示板に「書類を取りに来なさい」という呼び出し状を掲示する、公示送達という方法を利用することになります(民事訴訟法110条、111条)。公示送達に関する民事訴訟法の規定は以下のとおりです。

民事訴訟法110条(公示送達の要件)
 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
  当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
  第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
  外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
  第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
 前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
 同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。

111条(公示送達の方法)
 公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。

112条(公示送達の効力発生の時期)
 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
 前二項の期間は、短縮することができない。

 この「公示送達」を利用することを望む場合、「相手方の住所・居所がわからない」ことを裁判所に報告する必要があります。「公示送達」を利用するためには、通常、裁判所から以下のような調査を求められます。

・ 相手方の住民票を取得する。
・ 相手方が住民票上の住所地に住んでいないことを確認するため、現地調査を行う。水道やガスのメーターが動いているか。夜、電気がついているか。周囲の方が相手方の行方を知っていないかを聞きこむ。などの調査を求められる。
・ 住民票上の住所地以外に住んでいる可能性のある場所があれば、その場所の現地調査も行う。
・ 相手方の親族に対し、「相手方の行方を知らないか」照会を行う。

 特に離婚訴訟の場合、裁判所に「公示送達」を認めてもらうためには、通常の民事訴訟以上に慎重な調査を求められます。現地調査を複数回行うことを求められることもあります(筆者の経験では、朝・昼・晩と、3回の現地紙調査を求められたことがあります。)。「公示送達」を認めてもらうためには、相当の手間と時間がかかるということに注意が必要です。

 「公示送達」が認められた場合、通常は、相手方が欠席したまま離婚の裁判を進めることになります。この裁判の期日では、裁判所に離婚を認めてもらえるように、離婚を求める側(原告)で証拠を提出することが必要になります。通常、離婚を求めるご本人にも裁判に出席いただき、相手方が行方不明になった経緯や離婚を求める理由などについて、直接、裁判官に説明をしていただくことになります。また、財産分与・養育費・慰謝料・年金分割などをあわせて請求している場合は、これらの資料も裁判所に提出しておく必要があります。

 以上のように、相手方(配偶者)が行方不明の場合であっても、離婚の手続を進めることはできます。ただし、その手続きは複雑な部分もありますし、時間と手間もかかりますので、まず、弁護士にご相談され、見通しを付けてから、手続きを進めていかれることをお勧めします。

相手方が既に亡くなっている可能性がある場合

 相手方(配偶者)が長期間行方不明であり、すでに亡くなっている可能性が高い場合も離婚訴訟を提起し、公示送達により離婚をすることも可能ですが、事案によっては、失踪宣告の手続をとることにより、「死別」という扱いにすることも考えられます。失踪宣告が行われることにより相手方が「死亡した」とみなされる場合、「死別」扱いとなり、婚姻関係は終了します。

 失踪宣告が行われるのは以下の場合です。

① 普通失踪:不在者(住民票上の住所地又はこれまで住んでいた場所を去り、容易に戻る見込みのない方)について、その生死が7年間明らかでないとき
② 危難失踪:戦争・船舶の沈没・震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、1年間生死が明らかでないとき

 上記の場合において、利害関係を持つ方が家庭裁判所に「失踪宣告」の申立てをし、家庭裁判所が「上記のいずれかの要件を満たす」と判断した場合、失踪宣告が行われます。失踪宣告の手続は、以下のリンク先をご覧ください。

 失踪宣告が行われた場合、配偶者との関係は「死別」という扱いになります。離婚の場合と死別の場合では、氏の変更などの扱いが異なることになります。「離婚」の場合と「死別」の場合のそれぞれの扱いについては、以下のリンク先をご覧ください。

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