離婚や不倫の慰謝料とは? ・・・慰謝料請求の基本・・・

 「離婚や不倫(不貞行為)にともなって「慰謝料」が発生することがある」ということは、芸能ニュースなどでもよく報道されているなどしており、知っておられる方も多いと思います。

 ただ、どのようなときに「慰謝料が発生するのか」「いくらくらいの慰謝料が発生するのか」「慰謝料を請求するためにはどうすればよいのか」など詳しいことはわからないという方も多いのではないでしょうか?

 この記事では、慰謝料請求について、基礎的なことをお伝えします。より詳しい説明のページにもリンクしています。

「慰謝料」とは何か?どのようなときに発生するのか?

 「慰謝料」とは「被害者に生じた精神的な損害に対する賠償」のことをいいます。

 慰謝料はいろいろな場面で発生することがあります。交通事故や医療事故などの事故によって慰謝料が発生することもありますし、最近では、セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントなどのハラスメント行為やインターネット上の書き込みによる名誉棄損の事例などで発生する慰謝料もしばしば問題になっています。

 離婚や夫婦関係の問題に伴って発生する慰謝料としては、「不貞行為(不倫)による慰謝料」(不貞慰謝料)が有名かと思います。他にも夫婦間の暴力行為(DV)、モラルハラスメント行為などによって慰謝料が発生する場合もあります。また、離婚の原因をつくった側が相手方に支払う「離婚そのものの慰謝料」が発生することもあります。離婚の際の財産分与において慰謝料的な要素が考慮されることもあります。このように、離婚・夫婦関係では、慰謝料が問題となるケースは多くあります。

 まとめると、以下のようになります。

① 特定の行為によって発生する慰謝料

 不貞行為・DV・モラハラなどの特定の行為によって慰謝料が発生することがある。

② 離婚そのものの慰謝料

 離婚の際に、夫婦のどちらか一方の責任がより大きい場合に、責任の大きい側に慰謝料び支払義務が発生することがある。財産分与の中で考慮される場合もある。

 上記の①②の慰謝料は、厳密にいうと別のものです。例えば、不貞行為により離婚することになった場合には、厳密には、2つの慰謝料の請求権が発生することとなります。ただし、特別な事情がない限り、両方の慰謝料を一度に請求することが一般的です。

 なお、「婚姻届けは提出していないが、事実上夫婦同様の関係にある」ような「内縁」の解消、結婚の約束をし「婚約」をしていたにもかかわらず、これが一方的に破棄された場合などにも慰謝料の発生があり得ます。詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

  • 「慰謝料」とは「被害者に生じた精神的な損害に対する賠償」のことをいう。
  • 夫婦関係・離婚に伴って発生する慰謝料については、「不倫」「DV」「モラハラ」などの行為によって発生する慰謝料と離婚そのものに伴って発生する慰謝料の2種類がある。
  • 「内縁の解消」「婚約の不当破棄」によって慰謝料が発生することもある。

不倫(不貞行為)によって発生する慰謝料

 離婚・夫婦関係において発生する慰謝料の問題のうち、問題となるケースの数が多いのは、不貞(不倫)慰謝料でしょう。ここでは、不貞慰謝料について、簡単に説明をさせて頂きます。より詳しい説明は、以下の各ページをご覧ください。

 現在の裁判所の実務は、ある方の配偶者が不貞行為をした場合、その方は配偶者と配偶者の不貞相手の両方に対し、慰謝料請求をすることを認めています。また、片方に不貞行為により離婚をせざるを得なくなった場合、離婚に伴う慰謝料が発生することもあります。

 不貞慰謝料を請求する場合には、「不貞行為があったこと」つまり「配偶者が、配偶者以外の異性と、性的な関係を持ったこと」を証明していくことになります。「性行為など、性的な意味合いのある身体的な接触を持ったこと」を証明しします。通常は、「身体的接触があったと考えて差し支えない」ことを証明することができれば、不貞慰謝料の請求が認められることになります。

 不貞慰謝料の請求をするためには、上記の事項を証明するための「証拠」が重要になります。裁判になった場合は、「証拠」によって請求が認められるか、決まります。よくある証拠としては、不貞行為の場面の録画・録音・写真、ラブホテルに入るところの動画・写真などとなりますが、最近は、ラインのやり取りやGPSの記録などが証拠として提出されるケースも増えています。何が証拠になるかは事案によります。詳しくは弁護士にお尋ねください。

 なお、不貞慰謝料の請求をする場合に、弁護士費用や調査費用などの請求をできるのかという問題があります。詳しくは以下のリンク先をご覧ください。

慰謝料の額はどのようにして決まるのか?

① 一般論の説明

 一般論として、慰謝料の額は、慰謝料の額は生じた精神的的損害の大きさによって決まるとされています。教科書的な説明としては、慰謝料の額は、被害の程度、加害者・被害者の年齢・学歴・職業・収入・社会的地位、加害行為の動機、加害の経過など、様々なことを考慮して決まるとされています。そして、裁判で慰謝料の額を決める際には、裁判官は算定根拠を示す必要はないとされているため、慰謝料の算出の根拠はブラックボックスといわれています。なお、最高裁判所は、慰謝料の算定について、以下のように説明をしています。

【最高裁判所平成6年2月22日判決】
 元来、慰謝料とは、物質的損害ではなく精神的損害に対する賠償、いわば内心の痛みを与えられたことへの償いを意味し、その苦痛の程度を彼此比較した上、客観的・数量的に把握することは困難な性質のものであるから、当裁判所の先例においても、「慰謝料額の認定は原審の裁量に属する事実認定の問題であり、ただ右認定額が著しく不相当であって経験則又は条理に反するような事情でも存するならば格別」である(中略)とされている。

 ただし、交通事故については、件数も多いことから一定の算出方法が考案されており、入院・通院の日数や後遺症の程度によって一定の基準を設け、慰謝料を算出するということが行われています。

 それでは、交通事故以外の事案では、どのようにして慰謝料の額が決まるのでしょうか?次にご説明します。

② 具体的な慰謝料の決め方

 交通事故以外の事案では、(交通事故のような)「基準」はありません。特に交渉では、非常に低額な額で合意をしているケースもあれば、1000万円を超える額で合意をしているケースもあります。交渉の場合、通常、慰謝料の額は公表されないので、どのような事案でどのような解決がなされているかは不明です。

 一般的に、不貞行為の慰謝料の額は、以下の要素によって決まると言われています。

① 結婚期間の長さ
② 慰謝料の支払いをする側の支払能力
③ 不貞行為の回数、期間の長さなど、責任の重さ
④ 独立をしていない子の有無

 実際の慰謝料の額は事案によって様々です。特に交渉の場合は、上記の各要素のみでなく、早期解決の必要性(訴訟までするか)、支払う側の社会的立場、支払う側の経済状況なども影響することがあります。詳しくは弁護士にご相談ください。

③ 裁判になった場合

 裁判になった場合の慰謝料の額もケースによりますが、100万円以下の金額となる場合もあれば、数百万円の請求を認める判決もあります。一般的には、不貞やDVなどが原因で離婚に至ったケースの方が、離婚をしないケースよりも慰謝料の額は高額になります。よくある判決は100万円から300万円程度ですが、事案によって変わってきます。ただし、500万円を超えるような額が認められるのは、相当特殊な事情がある場合に限られるでしょう。

 芸能人の離婚などで高額な慰謝料の額が報道される場合もありますが、報道されるような慰謝料額は、弁護士の目線から言えば「一般的なものではない」ということになります。高額な慰謝料は、芸能人の方の収入が大きいことやイメージの問題で何とか裁判せずに解決したいなど、色々な要素があり、決まっているものと思われます。

  • 慰謝料の額は生じた精神的的損害の大きさによって決まる。
  • 明確な、慰謝料額の「相場」や「基準」は存在しない。
  • ただし、極端に高額な慰謝料が発生するケースは珍しい。

慰謝料はいつまで請求できるのか?・・・消滅時効の問題

民法724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
 不法行為の時から20年間行使しないとき。

 慰謝料の請求は(通常)「不法行為による損害賠償の請求権」なので、慰謝料を請求する権利は、慰謝料が発生する原因の事実を知ってから3年で時効かかります(1号)。

 不貞行為やDVなどによって発生する慰謝料の場合、不貞行為やDVなどの「行為」があったことを知った時点から3年で消滅時効によって権利が消滅します。

 離婚慰謝料の場合は離婚を知った時点(通常は離婚をした日)から3年で、権利が消滅します。

 3年というと長く感じられると思いますが、並行して離婚の手続などを進めていると、あっという間に3年たってしまうことがあり得ます。期限があることを知っておくことは大事です。

 慰謝料の請求は権利が消滅するまでに請求をする必要がありますし、消滅時効の期限が迫っている場合には、時効の進行を止めるため、早急に裁判を起こさなければならない場合もあります。裁判などによる時効の完成猶予・更新などについての詳しい説明は、以下のリンク先をご覧ください。

 また、現実的な問題として、通常、時間が経てば経つほど証拠も少なくなっていきます。証拠の確保という面からも、慰謝料が発生するような事態が生じたときにはできるだけ早く請求に向けて動き出すことが重要です。

 なお、慰謝料が発生する原因の事実が発生したときから20年経ったときにも消滅時効により権利が消滅しますが(民法724条2号)、夫婦関係・離婚に関する慰謝料の請求において、20年の期限が問題になるケースはほとんどないと思われます。

  • 慰謝料を請求する権利は、慰謝料が発生する原因の事実を知ってから3年で時効となる。
  • 証拠の確保という意味でも、早期の着手は重要となる。

さいごに・・・気を付けて頂きたいこと

 ここまでお話をしてきたとおり、慰謝料の請求は、請求する側も、請求される側も、検討すべきことが多くあります。

 特に、慰謝料を請求された側で、「不貞行為や暴力などをしてしまったことに間違いはない」という立場の方は、請求を受けると焦ってしまい、弁護士に相談をせず、ご自身で対応をしようと考える方もいらっしゃるかろ思います。しかしながら、このようなケースでは、焦りや専門知識を知らないことにより、不利な条件で合意をしてしまう危険が高いでしょう。ぜひ、一度冷静に考えるためにも、弁護士に相談されることをお勧めします

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