配偶者の不倫(不貞)が発覚した場合、慰謝料以外に請求できるものはあるのでしょうか?

 配偶者の不貞の問題が発生すると、一般に「慰謝料」の請求を考える方が多いかと思います。弁護士による広告などにより、「慰謝料請求ができる」ことをご存じの方は増えていると思います。それでは、慰謝料以外に請求することのできるものはあるのでしょうか。ここでは、配偶者の不貞が判明した場合にどのような請求をすることができるのか、ご説明をさせて頂きます。

弁護士費用を請求することはできるのか?

 まず、不貞の慰謝料請求をする場合の弁護士費用を相手方に請求できるのかという問題があります。

 この問題について、裁判所は、一般的に、不貞の慰謝料請求を行う場合に併せて弁護士費用を請求することを認めています。ただし、実際に支払った弁護士費用の支払を認めるわけではありません。一般的には、慰謝料請求として認められる額の1割(10%)を弁護士費用として認めるとの運用をしています。実際に弁護士に支払った金額ではないということに注意が必要です。

 なお、一般に、訴訟で勝訴すると「訴訟費用は被告の負担とする。」という判決が出ますが、この「訴訟費用」に弁護士費用は含まれません。「訴訟費用」は裁判所に納めた収入印紙や郵便切手などのことをいいます。

調査費用の請求をすることはできるのか?

 不貞の慰謝料請求をする場合に調査会社(探偵)に写真の撮影などを依頼される方もいらっしゃるでしょう。この場合の費用は、一般に高額になりますので、これを相手方に請求できないかと考える方も多いかと思います。

 この不貞の慰謝料請求の際に調査費用を請求できるのかという点について、裁判所の判断は分かれます。また、調査費用の請求が認められる場合であっても、その調査費用の全額が認められることは珍しく、調査費用の一部のみを認めるというケースがほとんどです。

 この点について、裁判所の考え方は裁判官によって様々ですが、一般的に、以下のように判断されるケースが多いと思われます。

  • 調査費用が認められるためには、不貞の慰謝料請求をするにあたり、調査を行うことが必要であったという事実を示す必要がある。
  • 例えば、相手方が不貞の事実を認めているなど、わざわざ調査会社に調査を依頼しなくても不貞の事実を明らかにすることができたような場合には、調査が必要であったとはいえず、調査費用の請求を認めない。
  • 相手方が不貞の事実を否定している事案や(不貞の相手方に請求する場合において)調査をしなければ不貞の相手方を特定することができないできない事案においては、調査が必要であったといえるため、調査費用の請求を認める。
  • 調査費用の請求を認める場合であっても、裁判所が認めるのは「相当因果関係のある範囲」に限定される。そのため、ほとんどの事案では、調査費用のうちの一部しか請求を認めない。

 以上のような判断になる傾向がありますので、「調査費用を相手に請求することができる」と安易に考え、調査会社に調査を依頼することは危険です。「調査費用の請求は簡単に認められるものではない」、「事案によっては、調査費用の一部を相手方に請求できる場合がある」と考えておいて下さい。

婚姻費用の請求を排除することはできるのか?

 夫婦は、相手方の生活費を分担する義務を負います(民法760条)。配偶者が不倫をしていたとしても、原則としては、不倫をしている配偶者に対する扶養義務があります。

 ただし、夫婦が別居に至った原因が一方当事者にある場合、その原因をつくった当事者からの婚姻費用分担請求は、認められなかったり減額されることがあります。裁判所は、不貞行為をして家を飛び出した当事者からの婚姻費用分担請求について、「信義則に反する」、「権利の濫用」として請求を認めないという判断をすることがあります。詳しくは、以下のリンク先をご覧ください。

 なお、配偶者に対する婚姻費用分担義務がなくなる場合であっても、子に対する扶養義務は残ります。不貞をした側の配偶者が子を養育している場合であっても、子に対する扶養義務を否定することはできません。同じように、離婚後の養育費請求を否定することもできません。

財産分与の請求を排除することはできるのか?

 不貞をした側の配偶者であっても財産分与を求める権利を失うことはありません。夫婦が結婚期間中に積み上げてきた財産を清算する「清算的財産分与」の場面では、一方の配偶者に婚姻関係破綻の原因があるかは考慮されず、原則として、2分の1の割合での財産分与が認められることになります。

 なお、財産分与を行うにあたっては、慰謝料の要素も考慮されることになります。「慰謝料的財産分与」と呼ばれます。この「慰謝料的財産分与」の要素により、財産分与の額が調整されることはあり得ます。しかしながら、調整の幅は大きくありません。基本的には、精算的財産分与の2分の1ルールが適用されます。財産分与の請求が、権利濫用により排除されるということはありません。

結婚式の費用などを返還するよう求めることはできるのか?

 一般的には、不貞が原因で離婚をすることになったとしても、結婚式の費用の返還を求めることはできません。

 例外的に、不貞をした側が婚約期間中から不倫をしていて、結婚後すぐに離婚をせざるを得なくなったケースにおいて、(ご祝儀・結納金などを控除した)結婚式の費用や新婚生活のために購入した家具・電化製品、新居への引越費用の返還を認めたケースがあります。

【佐賀地方裁判所平成25年2月14日】
 原告と被告は、婚約が成立したのであるから、正当な理由のない限り、将来結婚するという合意を誠実に履行すべき義務を負っているから、それぞれ婚約相手と異なる人物と性的関係を持たないという守操義務を負っていたというべきところ、被告は婚約成立後、Aという名前の女性と性的関係を持ち、しかも、結納後も、当該女性に対し執拗に性的関係を持つことを執拗に求めていたのであるから、婚約相手である原告の被告に対する信頼を裏切ったことは明らかである。原告が、被告の不貞の事実を婚約中に知ったのであれば、被告との婚約を破棄し、結婚式を挙げることはせず、新婚生活を送るために準備もしなかったであろうこと、さらに、被告の不貞により多大な精神的苦痛を被るであろうことは当然に予測し得たというべきである。
 そうすると、原告は、婚約中の被告の不貞を理由にして、不法行為に基づき、相当因果関係にある損害として、次の損害の賠償を求めることができるというべきである。
 (1)新婚生活のために購入した家具・電化製品、新居への引越費用(中略)
 (2)結婚式費用(中略)
 (3)慰謝料(中略)
(以下省略)

 ただし、上記の事例は例外的な事案です。結婚前から不貞行為をしていて、それを知っていれば結婚式を挙げることはなかったという特殊事情があったことから請求を認めたという事例になります。

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