相続人の中に音信不通の方・行方不明の方がいる場合はどのように対応をすればよいのでしょうか?

 遺産分割のために相続人を調査していると、一部の相続人の方が音信不通であったり、行方不明であるということがあり得ます。遺産分割は相続人全員で行わなければなりませんので、音信不通の方、行方不明の方がいらっしゃると、遺産分割の手続は止まってしまうことになります。

 このように、音信不通の方、行方不明の方がいらっしゃる場合、どのような対応がありうるのでしょうか。ここでは、相続人の中に音信不通の方、行方不明の方がいらっしゃる場合の対応方法について、説明をさせて頂きます。

他の相続人の住所の調べ方

 まず、遺産分割の際の住所の調べ方について、簡単に説明をさせて頂きます。

 他の相続人の方と長い間連絡を取っておらず、今、どこに住んでいるのかわからないというようなケースでは、まず、他の相続人の方の住民票上の住所を調べていくことになります。相続手続きの際に「戸籍」を取得することになりますが、この「戸籍」の「附表」を取得することで、その戸籍に載っている方の住民票上の住所を調べることができます。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村において戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在に至るまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住民票上の住所が記録されているものです。

 このようにして、住民票上の住所を調べることができますので、まずは、その住民票上の住所に「遺産分割の手続をしましょう」という内容の手紙を送ることになります。これに対して返事をしてくれれば、遺産分割の手続を進めていくことが可能になります。

 しかしながら、以下のような理由により、返事を得ることができない場合もあります。

① その場所に住んでいることは明らかだが、返事をしてくれない
② 認知症、精神・知的の障がいなどにより、返事をする能力を持っていないため、返事がない
③ その住所に住んでおらず、行方不明である(家はあるが、本人が住んでいないようなケースもあれば、家自体が存在しないようなケースもあります)
④ もうすでに亡くなっているはずの年齢だが、死亡届が提出されていない

 以上のような事態が起こってしまった場合、話し合いで遺産分割の手続を進めていくことはできなくなります。しかし、遺産分割をすることができなくなるというわけではありません。いずれの場合も、家庭裁判所で適切な手続きをとることにより、遺産分割を進めていくことが可能です。

 以下、それぞれの場合にどのような対応をすればよいのか、解説をしていきます。

 なお、具体的な事案においてどの制度をどのように使えばよいか、制度利用のためにどのような手続きが必要かは異なってくる場合があります。ぜひ、専門家にご相談ください。

その場所に住んでいることは明らかだが、返事をしない方がいる場合の対応

 まず、相続人の中の一部の方が、生きているのは明らかだし、普通に会話もできるのだが、他の相続人との折り合いが悪いなどの理由により、遺産分割の話し合いに参加をしてきてくれない、という場合への対応について解説をします。

 遺産分割の話し合いに応じてくれない相続人がいる場合、家庭裁判所の遺産分割の調停・審判を利用することになります。

 まず、遺産分割の調停や審判を申し立てた場合、すべての相続人に対し、家庭裁判所から手紙が送られます。相続人の方やその代理人からの手紙は無視しても、裁判所からの手紙には反応するという方もいらっしゃいます。

 さらに、家庭裁判所からの手紙を無視した場合であっても、対応することが可能です。家庭裁判所からの手紙が無視された場合、調停の手続を進めることはできません。家庭裁判所からの手紙を無視する相続人がいる場合、調停は不成立となり、自動的に「審判」に移行します。「審判」になると、家庭裁判所方の手紙を無視する相続人がいたとしても、家庭裁判所が、強制的に、遺産の分割方法を指定することになります。この「審判」により、遺産の分割方法が決定します。

 また、審判の場合、家庭裁判所からの手紙の受け取りを拒否する方への対応も可能です。

 通常、家庭裁判所からの郵便は、「特別送達」という、書留郵便のような郵便で送られます。相手方がこれを受け取りさえすれば、その後、相手方から返事がなくても、手続きを進めることができます。

 しかしながら、受け取り拒否をされてしまうと、そのままでは手続きを進めることはできません。受け取り拒否をされた場合、相手方の状況に応じ、家庭裁判所が郵便を発送した時点で郵便を送ったことにする「付郵便送達」や家庭裁判所の掲示板に呼び出し状を掲示する「公示送達」という手段を使うことになります。

 このように、家庭裁判所は、手紙の受け取りを拒否する方へも対応することができる制度を備えています。ただし、これらの制度を利用するためには、現地調査が必要になるなど、制度利用のために、家庭裁判所に対して様々な報告をすることが求められることとなります。この家庭裁判所対応は、なかなか難しいかと思いますので、手紙の受け取り拒否などの問題が起こりうるケースでは、早いうちから専門家に相談されることをお勧めします。

 以上のとおり、一部の相続人が遺産分割の話し合いを無視するような場合には、家庭裁判所の手続を利用することにより、強制的に遺産の分割を行うことができます。

相続人の中に判断能力のない方がいらっしゃる場合・・・成年後見制度の利用

 次に、相続人の中の一部の方が、認知症、精神・知的の障がいなどにより判断能力を失っている場合への対応について解説します。

 判断能力のない方は、遺産分割に参加をすることができません。判断能力のない方が参加をした遺産分割は、(親族の方が代筆をするなどして)遺産分割協議書などを作成したなどしても、無効になります。遺産分割を成立させるためには、その判断能力のない方の成年後見人(又は保佐人・補助人)を選ぶ必要があります。

 成年後見制度の説明や成年後見人等を選んでもらうための手続については、以下のリンク先の記事で詳しくご説明していますので、ぜひ、ご覧ください。

相続人の中に行方不明の方がいる場合・・・不在者財産管理人の選任

 相続人の方の中に行方不明の方がいる場合、家庭裁判所にその方の財産を管理する「不在者財産管理人」という人を選んでもらい、その管理人との間で遺産分割を行うことになります。

 不在者財産管理人を選んでもらう手続きの流れは、以下のとおりです。

 申立てをすることができるのは、「利害関係人」です。遺産分割のケースでは、通常、不在者の配偶者やご兄弟など、共同相続人になる方が申立てをすることになります。

 申立てをする先の家庭裁判所は、不在になった方の最後の住所地又は最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所です。

 申立ての手数料は800円です。また、連絡用の郵便切手が必要です。

 さらに、「予納金」が必要になることがあります。この予納金は、不在者財産管理人が業務を行うための費用に充てられるものとなります。不在者の方が一定額の遺産を受け取ることが明らかなケースなどでは予納金の納付は不要とされることもありますが、通常、申立てをする方が、一定額の「予納金」を納めることになります。

 予納金の額は事案と裁判所によって異なります。「一律30万円の予納金の納付を求める」などという運用をしている裁判所もありますし、事案に応じ、予納金の額を設定する裁判所もあります。予納金の額は、事案によって様々ですが、一般的に、0円から100万円の範囲内になることが多いと言われます。予納金の運用は家庭裁判所によって異なりますので、申立てを予定している家庭裁判所に、あらかじめ、問い合わせをされることをお勧めします。

 申立てをする際には、不在になった方が、これまでの住所地や居住地を去り、容易に戻る見込みがないことを裁判所に説明する必要があります。また、不在になった方の財産をわかる範囲で裁判所に報告します。その他、不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)、不在者の戸籍附票なども提出する必要があります。

 家庭裁判所は、申立てを受け付けると、関係者から話を聞く、関係機関に照会を行うなどして、不在者の行方を調査します。親族の方から状況を聞き取る他、免許証や健康保険の更新の状況を調査するなどして、本当に不在になっているのかを調査します。ここで不在者が見つかれば、申立てを取り下げることになります。

 なお、本記事の筆者は、一度だけ、裁判所の調査により不在者が見つかったケースを経験したことがあります。

 裁判所の調査によっても不在者の行方が分からなかった場合、家庭裁判所により、「不在者財産管理人」が選任されます。

Q
誰が「不在者財産管理人」に選任されるのでしょうか?候補者を推薦することはできますか?
A

誰を不在者財産管理人に選任するかは、家庭裁判所が決めます。候補者を推薦することも可能ですが、推薦した候補者が不在者財産管理人に選任されるかはわかりません。
弁護士や司法書士などの専門職が財産管理人に選任されるケースと親族の方が財産管理人に選任されるケースがあります。どちらになるかは家庭裁判所の判断次第です。

Q
「不在者財産管理人」の報酬は発生するのでしょうか?
A

不在者財産管理人からの請求により、家庭裁判所が報酬を決定します。管理人の報酬は、不在者の財産の中から支払われます。不在者の財産がない場合、予納金から支払われることになります。

Q
遺産分割が終了したら不在者財産管理人の業務は終わるのでしょうか?
A

遺産分割が終了しただけでは不在者財産管理人の業務は終了しません。不在者が現れたとき、不在者について失踪宣告がされたとき、不在者が死亡したことが確認されたとき、不在者の財産がなくなったときまで、財産管理人の業務は続きます。
なお、不在者が現れたときには不在者であった方に、不在者について失踪宣告がされたり不在者が死亡したときは不在者の相続人に、それぞれ財産を引き継ぐことになります。

 なお、不在者財産管理人は、家庭裁判所からの指示により、通常、被相続人の財産のうち、不在者の方の法定相続分を確保するという対応をすることになります。「不在になった方の取り分は少なくてもよい」ということにはなりませんので、注意が必要です。

相続人の中に、亡くなっているはずの方がいる場合・・・失踪宣告

 例えば、相続人の中に、生きていれば150歳になる方など、明らかに亡くなられているはずだが死亡届が提出されていおらず、戸籍上、生きていることになっている方がいらっしゃるような場合もあり得ます。このようなときは「失踪宣告」の手続を利用することになります。

 「失踪宣告」は、生死不明の方に対し、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。家庭裁判所により「失踪宣告」が行われると、仮にその方がどこかで生きていたとしても、法律上は亡くなったことになります。例えば、「失踪宣告」が行われるとその宣告を受けた方の遺産相続が発生します。宣告を受けた方に配偶者がいれば、「死別」として扱われます。

 失踪宣告が行われるのは、以下のいずれかの場合です。

① 普通失踪

 不在者(住民票上の住所地又はこれまで住んでいた場所を去り、容易に戻る見込みのない方)について、その生死が7年間明らかでないとき

② 危難失踪

 戦争・船舶の沈没・震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後、1年間生死が明らかでないとき

 普通失踪の場合、不在者の生死が不明になってから7年間が満了したときに死亡をしたこととされます。危難失踪の場合は、危難が去ったときに、死亡したものとされます。

 なお、家庭裁判所が自主的に失踪宣告をすることはありません。利害関係を持つ方が「失踪宣告」の申立てをして、家庭裁判所が「上記のいずれかの要件を満たす」と判断した場合に、失踪宣告が行われます。

 失踪宣告の申立ての手続は、以下のとおりです。不在者財産管理人の選任の手続と似ている部分が多くあります。

 申立てをすることができるのは、「利害関係人」です。不在者の配偶者、相続人にあたる方、不在者財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する方が申立人となります。

 申立てをする先の家庭裁判所は、不在になった方の最後の住所地又は最後に住んでいた場所を管轄する家庭裁判所です。

 申立ての手数料は800円です。また、連絡用の郵便切手が必要です。

 そして、失踪宣告が出される場合には、合計4816円の「官報公告費用」が必要です。内訳は、「失踪に関する届出の催告」の掲載費用3053円と「失踪宣告」の掲載費用1763円の2つです。裁判所の指示にしたがい、納めることになります。なお、官報公告費用は変更される場合があります。

 不在者財産管理人選任申立の場合と異なり、「予納金」が必要になることはありません。

 家庭裁判所に提出をする書類は、申立書の他、不在者の戸籍謄本(又は全部事項証明書)、不在者の戸籍の附票、失踪を証明する資料、申立人の利害関係を証明する資料(戸籍謄本など)です。

 家庭裁判所が申し立てを受け付けた後の調査の内容は、不在者財産管理人の選任申立てのときとほぼ同じです。家庭裁判所は、申立てを受け付けると、関係者から話を聞く、関係機関に照会を行うなどして、不在者の行方を調査します。親族の方から状況を聞き取る他、免許証や健康保険の更新の状況を調査するなどして、本当に不在になっているか、不在になってから7年が経過しているかなどを調査します。

 家庭裁判所の調査によっても不在者の行方が分からなかった場合、家庭裁判所は、通常失踪の場合は3か月以上、危難失踪の場合は1か月以上の期間を定めて、不在者に対して生存の届出をするように、また、不在者の生存を知っている人はその届出をするように、官報や裁判所の掲示板で催告をします。この期間内に届出などがなかった場合、家庭裁判所が失踪の宣告を行います。

 失踪の宣告が行われた場合、申立人は、戸籍法による届出をしなければなりません。失踪宣告の審判が確定してから10日以内に不在者の本籍地又は申立人の住所地の市区町村役場に対し、失踪の届出をします。この届け出の際には、家庭裁判所が発行する審判書謄本と確定証明書が必要になります。この届け出が行われると、失踪宣告を受けた方の戸籍に「失踪宣告により死亡したとみなす」と記載されます。

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