「自己破産」とはどのような手続きなのでしょうか?
自己破産は、簡単に説明すると「自身の財産を手放す代わりに、借金を免除してもらう手続きです」という手続きです。ここでは、この「自己破産」の手続きについて、その概要をご説明します。
破産手続きの流れ
弁護士に依頼をされた場合の大まかな流れは以下のとおりです。なお、事業者の破産・法人の破産の場合は、事案にもよりますが、流れが異なります。
弁護士から債権者宛に「受任通知」を送り、債務の内容を確認する。
同時に、ご依頼者から話を聞く、通帳、登記事項証明書、保険証券・解約返戻金見込額証明書、車検証、査定書、給与明細、住民票、戸籍謄本などの必要書類を集めるなどして、ご依頼者の資産状況や破産に至った経緯を確認し、書面を作成する。
必要書類を収集し、書面の作成が完了したら、ご依頼者の居住地を管轄する地方裁判所に申し立てを行う。
裁判所で申立書の審査が行われる。このとき、ご依頼者に資産がないことが明らかであり、破産に至った経緯に問題となる点が(ほとんど)なく、免責不許可事由も(ほとんど)ないと判断された場合には、「同時廃止」となる。他方、調査すべき事項があれば「管財」となる。
「同時廃止」となった場合は、官報公告費用(1万1859円程度)を納付し、後は裁判所の手続を待つのみとなる。裁判所・事案によっては、免責審尋期日があり、原則1回、裁判所に出頭する必要が生じる(出席を求められない場合もある。)。
「管財」となった場合には、官報公告費用(1万5499円程度)に加え管財予納金(一般的に、最低20万円。事案によって増えることあり。)を提出する必要がある。
なお、破産法上は原則「管財」で「同時廃止」は例外とされている。
「管財」となった場合は、裁判所が選任した「破産管財人」(通常は弁護士)がご依頼者の財産状況、負債の状況、破産に至った経緯などを調査する。ご依頼者に財産がある場合は、これを破産管財人が回収し、債権者の平等に分配する(「配当」と呼ばれる。)。通常、何度かご依頼者と破産管財人との面談があり、破産管財人に知っていることを説明する義務を負う(この義務に違反すると借金の免除を受けられないことがある。)。また、何度か「債権者集会」があり、原則、出頭する必要がある。
「同時廃止」になった場合や管財人による調査の結果、ご依頼者に財産がないことが判明した場合、配当が終了した場合に破産手続きが終了する(「破産手続廃止」と呼ばれる。)。
破産手続が廃止された後、残った借金を免除してよいかを審査する「免責」手続きが行われる。ここで「免責許可決定」を受け、この「免責許可決定」が官報(国が出版する新聞)に載り、異議申立てがないか認められなければ、「免責許可決定」が「確定」し、借金の支払義務を免れる(ただし、税金など、免責の対象とならない債務を除く。)。
以上の手続を経て、免責許可決定が確定することで、破産手続きが終了することとなります。
なお、法人の破産の場合、「免責手続」は存在せず、清算手続きを経て法人が消滅することになります。
破産手続きのメリット・・・債務の免責
自己破産の手続きでは、「破産」と同時に「免責」の申立てをすることが一般的です。個人の方の自己破産は、通常、この「免責」の効果を受けるために申立てを行います。
「免責」とは、簡単にいうと「借金の支払義務を免除してもらうこと」です。より正確にいうと、裁判所から「免責許可決定」を受けてこれが「確定」することにより、法律上免責を受けることのできない債務を除き、強制的に取り立てられることがなくなります。
なお、「免責許可決定」を受けて「確定」した後も、免責を受けた方が、自らの判断で、債務の支払いを行うことは禁止されていません。
破産手続きをすれば常に免責(借金を免除されること。)されるというわけではありません。例えば、競馬・競輪・競艇・パチンコ・パチスロ・カジノなどの賭博(ギャンブル)によって著しく財産を減少させたり過大な債務を負担した場合には、免責許可を受けられないとされています(破産法252条1項4号)。ただし、実際には、ギャンブルにとって多額の借金を背負ってしまったような場合でも、様々な事情を考慮して、裁量免責(破産法252条2項)により借金を免除してもらえるケースがほとんどです。
ただし、裁判所や破産管財人の調査にまじめに応じない、財産隠しをするなどの行為をすると免責許可を得ることが難しくなります。破産管財人や破産裁判所の指示を受け、誠実に対応することで、裁量免責を得られる可能性は高くなります。
詳しくは以下のリンク先をご覧ください。
法律上、免除されない債務があります。税金、罰金、養育費、故意または重大な過失により相手方に与えた損害賠償債務、借金があることを知りながら自己破産申立ての際に債権者名簿に記載しなかった債務などが免除されない債務にあたります(破産法253条1項各号)。
詳しくは以下のリンク先をご覧ください。
- (個人の)自己破産は、通常、「免責」を目的に行う。
- 「免責許可決定」を受けることで、(免責の対象とならない債務を除き)強制的な取り立てを受けることがなくなる。
破産手続のデメリット
① 一定の財産を除き、財産を手放す必要がある
破産をすると、原則として自身の財産を手放すこととなります。最低限、生活に必要な資産は手元に残すことができます(99万円までの現金や生活家電など。また、裁判所によって運用は異なりますが、一定の預貯金なども手元に残せることが一般的です。これら手元に残すことのできる財産を「自由財産」と呼びます。)が、不動産(土地・建物)、自動車、生命保険などは、原則として手放さなければなりません。ただし、事情によって売却されないこともあります。詳しくは、弁護士にお尋ねください。また、不動産・自動車などについてローンが残っている場合には、権利者によって競売にかけられたり回収されることもあります。
② 資格制限がある
破産手続中は生命保険の外交員や警備員など、一定の仕事に就くことができなくなります。よく問題となる職業としては保険の外交員と警備員です。他にも、いくつかの国家資格については、破産手続き中は就任できないものがあります。破産手続きが終了すると、再び就職できることになります。
③ 管財事件になった場合の負担
管財事件になった場合、裁判所に「管財予納金」を納める必要があります。事案や裁判所によって費用は異なりますが、一般的に、20万円以上の金額を求められます。また、管財事件となった場合、管財人との打ち合わせや債権者集会に出席するなどの手間が発生します。
また、破産管財人が選任された場合は、引っ越しをする前に裁判所の許可を得る必要が生じ、郵便物が(調査のために)破産管財人に転送されるようになります。
④ 債務整理全体のデメリット
以上の破産特有のデメリット加え、債務整理全般の不利益として、信用情報機関に事故情報が搭載されるため、新たな借り入れが難しくなります(いわゆる「ブラックリスト」入り。)。いつから新たに借り入れができるようになるかは状況によって異なりますが、数年は新たな借り入れやローンを組むことは難しくなります。借金をするのみではなく、自動車やスマートフォンの本体を分割で購入することも難しくなりますので、注意が必要です。
他に、これも債務整理全般にいえることですが、債務整理を行うことにより、保証人に請求がいくことになり、迷惑をかけることになります。
なお、破産手続が開始されると、(税金などの免責されない債務を除き)取り立ては停止します。破産手続が開始している、あるいは免責許可を受けたにもかかわらず取り立てが止まらない場合には、専門家に相談をされることをお勧めします。ただし、免責許可を受けた後、ある債務が免責の対象になるかが争われることはあり得ます。
- 自己破産をすると、財産を手放す必要がある、一定の職業に就くことができなくなるなどの不利益を受ける。
- ブラックリストに載る、保証人に請求がいくなどの不利益設けるが、これらの不利益は、債務整理全般で受ける不利益であり、自己破産特有のものではない。
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