借金の返済ができていない場合、勤務先や家族などに連絡が入ることはあるのでしょうか?
「借金の返済が滞っている」「債権者から電話がかかってきている」「このまま放置をしていると勤務先や家族にも連絡が行くのではないか」と心配されている方も多いのではないかと思います。債務者本人からの返済が滞っている場合、どのような取り立て方法が許されるのでしょうか?取り立ての方法は貸金業法で規制をされており、職場やご家族などに対する取り立ては、一定の場合を除いて禁止されています。ここでは、その内容をご説明します。
なお、以下の説明のうち、「1 取立ての連絡方法に関するルール」は貸金業法全体に関する説明になりますので、結論を知りたい方は、「2 債権者は債務者の勤務先に連絡をしてもよいのか?」又は「3 債権者は債務者の家族に連絡をしてもよいのか?」をお読みください。
取立ての連絡方法に関するルール
① 貸金業法の登録
消費者金融など、貸金業を営む場合、「貸金業法」により、国に登録をしなければならないことになっています。ある業者が貸金業法の登録をしているかどうかは、金融庁のウェブサイト内にある「登録貸金業者情報検索サービス」(金融庁のウェブサイトにリンクをしています。)で確認をすることができます。子の貸金業法の登録を受けるためには、貸金業法に定められているルールを守る必要があります。貸金業法のルールに違反をすると登録を取り消されるなどの処分を受けることになります。
なお、この貸金業法の登録を受けていないにもかかわらず、金貸しを事業をして行っている者を、一般に「ヤミ金」と呼びます。「ヤミ金」は、貸金業法のルールを守らず違法な取り立てを行ってくる可能性がありますし、そもそも「ヤミ金」自体違法な存在ですので、絶対に「ヤミ金」からお金を借りないようにして下さい。
② 貸金業法に定められている取立てのルール
貸金業法においては、以下のように、取立てのルールが定められています。
貸金業法21条1項(取立て行為の規制)
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯(注:政令により、連絡をしてよい時間帯は、午前9時から午後8時までと定められています。)に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
五 はり紙、立看板その他何らの方法をもつてするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
六 債務者等に対し、債務者等以外の者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することを要求すること。
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
九 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
十 債務者等に対し、前各号(第六号を除く。)のいずれかに掲げる言動をすることを告げること。
このように、よく漫画やドラマなどで描かれている取立方法の多くは法律により規制をされています。貸金業者からの取り立てを過度に恐れる必要はありません。ただし、過度な取り立てがないからといって借金の整理をしなくてもよいということはありません。返済が滞ってしまった場合には、できる限り早く、専門家に相談されることをお勧めします。
③ 貸金業者がルール違反をしている場合、どうすればよいか
貸金業者が上記の貸金業法の規定に違反をした取り立てをしてきた場合、その取立てには応じず、金融庁に通告をすべきです。金融庁は、貸金業者の違法行為を調査し、指導、警告するなどして、最終的には貸金業の登録を取り消す権限を持っています。「お金を借りて返すことができていない」という負い目はあるかもしれませんが、「権利があれば何でもやってよい」というわけではありませんので、違法な取り立てに応じてはなりません。ご自身での対応が難しい場合は、(返済を行う前に)弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。
債権者は債務者の勤務先に連絡をしてもよいのか?
貸金業法には、以下の規定があります。
貸金業法21条1項(取立て行為の規制)
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(省略)
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
四 債務者等の居宅又は勤務先その他の債務者等を訪問した場所において、債務者等から当該場所から退去すべき旨の意思を示されたにもかかわらず、当該場所から退去しないこと。
(以下略)
この規定のとおり、貸金業者は、正当な理由がないにもかかわらず、債務者の勤務先に電話をしたり押しかけたりしてはてはならないと規制されています。債権者が既に訴訟に勝訴するなどして債務名義を持っており、給料の差押えをする場合などは、債権者から債務者の勤務先に連絡をしなければならないことになります。また、債務者が行方不明の場合に、やむを得ず職場に請求書を送るということも許されることがあります。一方で、このような事情がないにもかかわらず、「職場に連絡をして脅せば返済をしてもらえる」と期待して職場に連絡をすることは禁止されています。
もし、貸金業者から、理由がないにもかかわらず、勤務先への電話や訪問があった場合には、金融庁に苦情の申立てをすることなどが考えられます。ご自身での対応が難しい場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
なお、職場への連絡が原則として禁止されているからといって、返済が滞っている状態を放置してよいというわけではありません。放置をしていると、最終的に裁判を起こされ、給料を差し押さえられるなどして、借金の返済が滞っていることを勤務先が把握することがあり得ます。借金の返済が滞った場合には、できる限り早く、弁護士などの専門家に相談をすべきです。
債権者は債務者の家族に連絡をしてもよいのか?
① 債務者の家族が(連帯)保証人になっている場合
(連帯)保証人は、債務者が債務の支払いを行わない場合、債務者に代わって返済を行う責任を負います。そのため、債務者からの返済が滞っている場合に、債権者が、(連帯)保証人に請求を行うことは、正当な権利の行使となります。「借金の返済が滞っているが、(連帯)保証人に連絡がいかないようにしてほしい」というご要望にお応えすることはできません。(連帯)保証人の資産・収入状況によっては、(連帯)保証人の方も含め、債務整理の検討をしなければならないことになります。
このように、(連帯)保証人の方への請求は正当な権利の行使となります。これを止めることはできません。(連帯)保証人を頼む場合には、「自身が借金の返済を滞らせた場合には(連帯)保証人に請求が行く」ことを十分に理解した上で、お願いするようにして下さい。
② 債務者の家族が(連帯)保証人ではない場合
貸金業法には、以下の規定があります。
貸金業法21条1項(取立て行為の規制)
貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(省略)
七 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わつて債務を弁済することを要求すること。
八 債務者等以外の者が債務者等の居所又は連絡先を知らせることその他の債権の取立てに協力することを拒否している場合において、更に債権の取立てに協力することを要求すること。
(省略)
貸金業法は、債務者以外の方に対し、債務者に代わって返済をするよう求めることを禁止しています。ご家族も(連帯)保証人になっていない限りは、債務者にはなりませんので、(連帯)保証人になっていないご家族に対して債務の返済をするよう求めることは禁止されます。貸金業者からの電話を、偶然、ご家族がとることもあるかもしれませんが、そのような場合であっても、貸金業者からの請求に応じてはなりません。「家族だから返さなければならないのではないか」と考える必要はありません。「自分は借主ではない」として、返済を拒むようにして下さい(そもそも、電話に対応する義務もありませんので、電話を切ってもらって大丈夫です。)。
上記のような規制があるにもかかわらず、債権者からご家族への請求が止まらない場合には、金融庁に苦情の申立てをすることなどが考えられます。ご自身での対応が難しい場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
いわゆる「ヤミ金」の場合など
貸金業法の登録を受けていない「ヤミ金」は、当然、貸金業法の規定を守ろうとはしません。自宅や職場に押しかけてくる例もありますし、ご家族や関係者に対し、本人に代わって支払いをするよう、求めてくることもあります。このような「ヤミ金」に対しては、どのように対応をすべきなのでしょうか?
まず、そもそも「ヤミ金」は違法です。貸金業法の登録を受けていないにもかかわらず、貸金業を営むことは法律で禁止されています。「ヤミ金」を営むと、貸金業法違反などにより処罰の対象となります。このように「ヤミ金」は違法な存在ですから、「ヤミ金」からお金を借りることは絶対にやめてください。「返済が苦しく、まともな(貸金業法の登録をしている)金融業者からお金を借りることができない」という状態になってしまっている場合には、すぐに債務整理を行うべきです。「ヤミ金」からの借り入れを検討することは止めてください。
既に「ヤミ金」から借り入れをしてしまっており、自宅や職場まで来ている、電話が止まらない、などの状況になってしまっている方は、弁護士などの専門家に相談されるとともに、警察に通報するようにして下さい。自宅や職場に無断で乗り込むことは住居侵入罪、不退去罪、業務妨害罪などの犯罪行為になる場合もありますし、請求の仕方によっては脅迫罪、恐喝罪などに該当することがあり得ます。緊急の対応が必要な場合には、まず、警察に通報するようにして下さい。また、「ヤミ金」からの借り入れについては、通常、返済する義務が発生しません。「ヤミ金」に対してどのように対応すればよいかは、弁護士などの専門家にお尋ねください。
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