亡くなられた方の財産の調査はどのように進めていけばよいのでしょうか?
「被相続人が亡くなられ、相続が発生しました。しかしながら、被相続人は遺言を作成しておらず(又は、遺言を作成しているが、正確な財産目録を作成しておらず)、亡くなられた方の財産として、どのようなものが、どの程度あるか、わかりません。」というご相談を受けることがあります。このような場合に、どのような調査を行っていけばよいのでしょうか?
ここでは、主に遺言や財産目録が作成されていない場合の財産の調査の方法について、一般的な流れをご説明させていただきます。
最初にしなければならないこと・・・戸籍謄本の収集
① 戸籍謄本収集の方法
相続人として銀行などに情報の開示を請求する場合、ほぼ、必ず、「相続人であることを示す戸籍謄本(や除籍謄本)」を提出するよう、求められます。例えば、亡くなられた被相続人の方が父親であれば、情報の開示をする方がその父親の子であることを示す戸籍謄本を提出することになります。被相続人との関係が配偶者や親子であれば、通常は提出する戸籍謄本は少なくて済みますが、被相続人との関係が兄弟であったり、甥姪であったりすると、多くの戸籍謄本・除籍謄本を集めなければならないことになります。
また、戸籍謄本・除籍謄本は本籍地の市区町村で管理をしていますので、被相続人の方などの本籍地が遠方の場合は、その役所まで出向くか、郵送で取り寄せるなどの手続が必要になります。関係者が多く、本籍地が遠方の方も多いようなケースでは、この戸籍謄本などの収集だけで数か月かかるようなことも珍しくありません(集めるべき戸籍の数が100を超えるようなケースもあります。)。また、戸籍謄本などを請求する場合には、1通につき数百円の手数料が発生します。集めるべき戸籍謄本などの数が多い、本籍地が遠方で郵便での取り寄せが多くなる、といった場合には、戸籍謄本などの収集をするだけで高額な費用が必要になることもあります。
このように、戸籍謄本などの収集は、事案によってはかなりの労力が必要になることもあります。ご自身での収集が難しいケースでは、弁護士などの専門家にご相談いただければと思います。
- 相続財産の調査を行うにあたっては、まず、被相続人(亡くなられた方)と調査を行う方との間に相続関係が発生していることを示す戸籍謄本・除籍謄本を収集する必要がある。事案によっては、多数の戸籍謄本などを集めることが必要になる。
- 戸籍謄本などは、本籍地の市区町村に請求することにより収集する。本籍地が遠方の場合は、郵送で請求を行うこともできる。
- ご自身で戸籍謄本などを収集することが難しい場合は、弁護士などの専門家に収集を依頼することもできる。
② 法定相続人情報一覧図
先ほどお話ししたとおり、相続に関する各種の手続を行う場合には、多くの場合、相続関係を明らかにする戸籍謄本などの提出が求められます。特に戸籍謄本などの量が多くなる場合、各種手続きの度に大量の戸籍謄本などを収集しなければならないことになり、かなりの手間が発生します。また、事案によっては、戸籍謄本などの収集のために高額な費用が必要になります。
これらの問題を解決するため、平成29年5月29日から、法務局で、「法定相続情報一覧図」というものを作成してもらうことができるようになりました。これは被相続人の相続関係を、家系図のように一覧にしたもので、法務局の登記官が認証をするため、この書類によって法定相続人が誰であるかを公的に示すことができるというものになります。
なお、この「法定相続情報一覧図」は法務局が、自動的に作成してくれるものではありません。申請をする方が、戸籍謄本などを準備し、一覧図を作成し、法務局に申請をする必要があります。この手続きには相当の労力が必要になります。ご自身での対応が難しい場合は、専門家への相談をお勧めします。
また、「法定相続情報一覧図」は、役所での手続きであればほぼ確実に使用することができますが、銀行などによっては対応をしていない場合がある、遺言による相続の場合や相続放棄などが発生している事案では利用することができないなどの問題もあります、詳しくは専門家にご相談されることをお勧めします。
不動産の調べ方
まず、不動産については、亡くなられた方が所有していた不動産の地番などがわかっている場合には、法務局で登記事項証明書を取得することにより、その内容を確認することができます(未登記の物件を除く)。この登記事項証明書は、申請をすれば誰でも取得することができますので、取得にあたって戸籍謄本などを提出することは不要です。登記事項証明書を取得したい場合は、申請書に必要事項を記入し、法務局の窓口で、手数料(通常600円)を収めて申請することになります。また、オンライン請求をすることもできます。詳しくは法務局のウェブサイトをご覧ください。
不動産の地番などが不明な場合、固定資産税の通知書・納付書を見る、「名寄帳」を請求するなどの方法で被相続人が所有をしていた不動産の内容を確認できる場合があります。固定資産税の通知書・納付書は、通常、年に1回、その不動産が所在する市区町村から送られてきます。これを見れば、その市区町村内にどのような不動産を所有していたのか、確認をすることができます。また、「名寄帳」という書類は、この固定資産税の請求のため、各市区町村が、各所有者別に、その市区町村内に所有している不動産の一覧表を作成しているものです。この「名寄帳」は、各市区町村の窓口で、戸籍謄本などの必要書類を添えて申請することで取得できます(ただし、「名寄帳」を作成していない市区町村もあります。)。これらの書類により、被相続人が、ある市区町村内にどのような不動産を所有していたのか、確認をすることができます(複数の市区町村に不動産を所有していた場合には、複数の市区町村分の書類を確認する必要があります。)。
なお、令和8年4月までに、法務局の登記官が、特定の被相続人について、登記簿上の所有者として記録されている不動産を一覧化し、証明する制度が設けられることになっています。
預貯金の調べ方
預貯金は、被相続人名義の預金通帳やキャッシュカードなどがあれば、その預金通帳やキャッシュカードから銀行や支店名などを特定し、照会をかけることで預金口座の状況を調査することができます。通常、銀行書式の照会書や戸籍謄本などを提出する必要があります。また、銀行によって、どこの窓口でも対応が可能な場合と、預金口座のある支店のみでの対応になる場合があります。詳しくは、各銀行にお問い合わせ下さい。
預金通帳やキャッシュカードはないが、どの銀行に預金口座があるかわかっている場合には、通常、その銀行に照会をかけることで預貯金の状況を把握することができます。照会の方法や必要書類は銀行によって異なりますので、各銀行にお問い合わせ下さい。
どの銀行に預金口座があるか、全くわからない場合、調査は難しくなります。残念ながら、一括で照会をする方法はありません。各銀行に照会を行えば預金の有無を含めて回答をしていただけるため、その地域内の銀行やメガバンクに照会を行ってみる、郵便物や判明している預金口座の取引明細から関係しそうな銀行に照会をかけるなどしていくことが一般的です。
その他の財産の調べ方
その他の財産についても、調査の方法は基本的には預貯金口座と同じです。どこに財産があるか判明している場合には、そこに照会を行います。保険会社や証券会社など、判明している相手方に照会をかけていきます。また、被相続人宛に送られてくる手紙から財産が判明するケースも多くありますので、これらの書類からも財産の状況を把握していくことになります。基本的には、財産がありそうな場所を把握して、そこに照会を行う、という流れを繰り返していくことになります。
一括の照会が可能かどうかは、その財産によります。自動車など登録のされているものであれば、陸運局などに照会をかけることで財産の有無を把握することができます。詳しくは、専門家にお尋ねください。
負債の調べ方
負債についても、債権者(相手方)がわかっていれば、債権者に問い合わせを行えば、その内容を把握することができます。実際には、債権者から被相続人へ請求書が送られてくることで判明するケースが多くあります。負債について注意すべき点としては、負債の状況によっては相続放棄や限定承認を検討しなければならないという点です。資産だけではなく負債の相続もあるケースでは、できる限り速やかに資産と負債の状況を確認して、相続放棄や限定承認を行うか、決めなければなりません。相続放棄や限定承認をすることのできる期間は「自身のために相続があったことを知ってから3か月以内」なので、この期間内に判断をするか、期間内に判断をすることができない場合には期間の延長の申請をしなければなりません。詳しくは以下のリンク先をご覧ください。
なお、被相続人の負債の状況は、信用情報機関(JICC・CICC・全国銀行協会など)に照会をかけることでも把握することができる場合があります。ただし、全ての負債を把握することができるわけではないこと、照会の手続に時間がかかること、機関によるが手続きが複雑になる場合があることに注意が必要です。
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