配偶者から暴力を受けています。どのように対応をすればよいのでしょうか?
配偶者による暴力がある事案では、まず、ご自身(と子)の身の安全を確保することが第一です。その上で、必要な手続きを進めていくことが必要になります。
なお、男性も女性も、被害者にも加害者にもなり得ます。身の危険を感じられた際には、躊躇せず、相談をするようにして下さい。
ここでは、配偶者による暴力がある事案について、どのように対応すべきか、離婚に向けて動く際の注意点としてどのようなものがあるのか、解説します。
配偶者による暴力の問題が発生したら(初動の対応)
まず、身の安全を守ることが第一です。緊急の場合は警察に通報をしてください。少し余裕がある場合は、各都道府県や市区町村に相談窓口がありますので、そちらへのご相談も可能です。相談窓口の名前は地域によって様々です(配偶者暴力相談支援センター・女性相談センターなど)ので、ご不明な場合は各役場にお問い合わせください。どうすればよいかわからない場合は、まず、警察に相談をしてください。なお、警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談は、後で説明をする「保護命令」を求める際にも必要になります。
また、これも余裕があればですが、けがをした部分の写真を撮る、病院に行って診断書を作成してもらうなどして、証拠を残していただけると今後の手続きで役立てることができます。警察や行政が対応をした場合、報告書などが作成されますので、これも証拠となります。警察が作成した報告書は、警察に対して保有個人情報開示請求をすることにより取得することになります。
- まず、身の安全を確保することが第一。
- 緊急の場合は警察に、少し余裕がある場合は各都道府県・市区町村などが設置をしている窓口に相談を。
- 余裕があれば、診断書を取得したりけがの写真を撮るなど、証拠収集を。
身の安全を確保できた後の対応
一時的な身の安全の確保ができた後の流れは、今後も暴力等の危険があるかによって異なってきます。
① 保護命令の発令を求める手続き
今後も暴力が続くなどの危険がある場合は、裁判所に「保護命令」の発令を求めていくことになります。この「保護命令」を発令するのは「地方裁判所」となります。離婚調停などを取り扱う「家庭裁判所」とは異なりますので、注意が必要です。
「保護命令」とは、裁判所が、加害者(とされる方)に対し、
- 被害者への接見禁止命令
- 被害者への電話等禁止命令
- 被害者の子への接近禁止命令
- 被害者の親族等への接近禁止命令
- 住居からの退去命令
の全部または一部を発令する手続です。加害者(とされる方)は、発令された命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
保護命令の申立を行う場合には、原則として、地方裁判所への申立ての前に、警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談が必要となります。そのため、地方裁判所に申立てをする前に、まずは、都道府県・市区町村、警察などの相談窓口に相談をしていただくことになります。これらの窓口で保護命令の申立ての支援を受けることができることもあります。警察や配偶者暴力相談支援センターへの相談がない場合には、公証人役場で「宣誓供述書」(身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況などを記載した書面に公証人が認証を与えたもの。)を作成することが必要になります。
保護命令の申立書・陳述書などの書式は、地方裁判所の窓口で受け取るか、裁判所のウェブサイトで入手することになります。この書式に必要事項を記入していきます。特に、陳述書には、暴力などの状況をできる限り詳細に記載するようにして下さい。申立書や陳述書に書かれた内容を裏付ける証拠があれば、その証拠の添付する必要があります。診断書やケガをした場所の写真などがあれば、これらが証拠になりますので、申立書に添付します。申立書・陳述書などが完成したら、地方裁判所の窓口に申立書・陳述書・証拠などを提出します。
地方裁判所は提出された書類の審査と申立人(被害者とされる方)・相手方(加害者とされる方)からの聞き取りを行い、保護命令発令の必要はあるか、発令する場合、どの命令を発令するかを検討し、判断します。申立人と相手方が裁判所で会うことがないよう、時間や日程をずらして裁判所に呼び出すことになります。
聞き取りの結果、保護命令の発令の必要性が認められれば、保護命令が発令されます。発令を求めた命令のうち、一部のみ発令されることもあります。特に「住居からの退去命令」については慎重に判断されます。
保護命令の有効期間は、「住居からの退去命令」のみ2か月、その他の命令は6か月です。延長が必要な場合、再度、保護命令の申立てを行うことができます。ただし、再度の申立て時点でも、なお、保護命令発令の必要性があることを裁判所に認めてもらえなければ、再度の保護命令の発出を認めてもらうことはできません。
② 「住民票の閲覧制限」などの申請の手続き
保護命令とは別に、住民票を置いている市区町村(又は本籍地の市区町村)に申請を行うことにより、住民票などの閲覧を制限することができます。手続きは、各市区村長の窓口で行います。この申請が認められると、加害者(とされる方)は被害者(とされる方)の住民票を閲覧・取得することができなくなります。これにより、被害者(とされる方)が住民票を異動したとしても、加害者(とされる方)に転居先を知られる危険が低くなります。
この申し出は、保護命令の申立とは別の手続です。保護命令の発令を求めていく場合にはこちらの手続もとる必要があります(通常は、相談をした警察や行政から案内があると思います。)。保護命令の発令は求めないが、住民票の閲覧制限のみを求めるということも可能です(ただし、市区町村の審査により申請が認められないことはあり得ます。)。
- 今後も暴力が続くなどの危険がある場合は、裁判所に「保護命令」の発令を求めていくことになる。
- 保護命令の有効期間は「住居からの退去命令」は2か月、その他の命令は6か月。命令が出ている間に生活を整えることになる。
- 住民票を置いている市区町村などに申請を行うことにより、相手方(加害者とされている方)による住民票の閲覧などを制限することもできる。
離婚に向けて、どのように動いていけばよいか?
以上の各手続により安全を確保したうえで、離婚を決意された場合には、離婚の手続きに移ります。このようなケースでは当事者間での交渉は難しいと思われますので、弁護士が介入することが多いかと思います。加害者(とされる方)の側から離婚を望んでいるという話が出てこなければ家庭裁判所の調停を利用することが多いでしょう。
① 調停を申し立てる際に注意すること
家庭裁判所の調停は、現在の住所を秘匿しつつ手続きを進めることができますし、調停当日に当事者が顔を合わせることがないよう配慮もしてくれます。
まず、調停の申立書に記載する住所については、現在、避難をしている場所を記載する必要はなく、避難をする前に住んでいる住所を記載するなどの方法で対応をすることができます。詳しくは、弁護士や家庭裁判所にお問い合わせ下さい。また、家庭裁判所に提出する資料について、避難をしている先の住所などの情報が記載されているものについては、相手方に非開示にするよう申し出ることも可能です(実際に非開示にするかは、裁判官が判断をします。)。この非開示の申し出や、資料のマスキングなど、方法を間違えてしまうと相手方に現在の避難先などを知られてしまうことにもなりかねませんので、情報の秘匿が必要なケースでは、専門家である弁護士の支援を受けることをお勧めします。避難などにより収入を失っている方なども、法テラスのDV等被害者法律相談援助制度や民事法律扶助制度を利用するなどして弁護士に依頼をすることができます(法テラスのウェブサイトにリンクをしています。)。
② 調停当日について
調停当日については、家庭裁判所に事前に申し出をしておくことで、待合室を遠くにする、調停の部屋を分ける、集合時間を分けるなどの配慮を受けることができます。家庭裁判所の作成している調停の申立書の中にDVなどの状況について報告をする書式が入っていますので、こちらを使って家庭裁判所に報告をすることになります。また、特にトラブルが起こる危険性の高い事案では、事前に、電話や面談などで、家庭裁判所と打ち合わせを行うこともあります。DV事案などでは、家庭裁判所は、相当の配慮をしてくれます。しかしながら、相手方やその関係者などによる待ち伏せなどもあり得ないわけではありません。実際に、家庭裁判所やその周辺での暴力事件も発生しています。事案によっては、家庭裁判所の調停に直接出席せず、電話での参加や遠方の裁判所からウェブ会議により出席するなどの対応をとることもあります。
このように、家庭裁判所と調整すべきことも多くありますので、DVの問題がある事案では、他の事案以上に、弁護士のサポートを受ける必要が高いと考えます。
- 安全を確保したうえで、離婚の手続を進めていく。多くの場合、家庭裁判所の調停手続を利用することになる。
- 暴力の危険がある場合、家庭裁判所とよく協議をし、配慮をしてもらいながら調停を進めることになる。
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