「住民票等の閲覧制限」とはどのような手続きなのでしょうか?閲覧制限の相手方となってしまった場合にはどのように対応をすればよいのでしょうか?
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為、児童虐待などの被害を受けている方は、市区町村に申し出をすることにより、加害者(とされる方)からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限する(拒否する)措置を受けることができます。ここでは、この措置について、措置の申出の方法などについて解説をします。また、支援措置の相手方となってしまった場合の対応についても解説します。
支援措置を受けるにはどのようにすればよいか?
支援措置の手続についての説明は、以下のとおりです。なお、実際には、警察や配偶者暴力相談支援センターなどへの相談をした際に、支援措置についても案内を受けるケースが多いかと思います。DVなどの被害を受けられている方は、まず、警察や配偶者暴力支援センターなどにご相談されることをお勧めします。
① 支援措置の申し出ができる方
住民票の閲覧制限などの支援措置を受けることができる方の範囲は、住民基本台帳法において、以下のように定められています。支援措置を求めるためには、まず、市区町村に対し、以下のいずれかに該当することを説明しなければならないことになります。
- 配偶者暴力防止法第1条第2項に規定する被害者(内縁を含む配偶者からの暴力を受けた者)であり、かつ、暴力によりその生命又は身体に危害を受けるおそれがある方
- ストーカー規制法第7条に規定するストーカー行為等の被害者であり、かつ、更に反復してつきまとい等をされるおそれがある方
- 児童虐待防止法第2条に規定する児童虐待を受けた児童である被害者であり、かつ、再び児童虐待を受けるおそれがあるもの又は監護等を受けることに支障が生じるおそれがある方
- その他1から3までに掲げる方に準ずる方
② 支援措置の申出先
支援措置の申し出は、住民票については住民票を置いている市区町村に、戸籍の附表については本籍地の市区町村に、申出を行います。裁判所で行う手続きではありませんので、ご注意ください。
③ 支援措置の申出の方法
住民票を置いている市区町村の窓口や本籍地の市区町村の窓口に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出することにより、DV等支援措置を求める旨の申出を行います。書式は、各市区町村の窓口で受け取ることができます(インターネット上に書式を掲載をしている市区町村もあります。)。
この申し出を受けた市区町村は、支援措置が必要かどうかを判断することになります。申し出を受け付けた市区町村は、支援措置の必要性について、警察、配偶者暴力相談支援センター、児童相談所などから意見を聞き取る、申出をした方に対して「保護命令決定書」(保護命令の発令は、地方裁判所が行います。)や「ストーカー規制法に基づく警告等実施書面」(警察が発令するものです。)などの書面の提供を求めるなどして、支援措置の必要性を判断します。このように、支援措置は、申出をすれば必ず認められるというものではありません。警察や配偶者暴力相談支援センターなどへの相談をしたことのない方は、まず、そちらにご相談されることをお勧めします(通常、警察や配偶者暴力相談支援センターなどが支援措置が必要と判断した場合には、市区町村への手続を案内してくれます。)。
なお、支援措置の判断は、市区町村が行うものです。裁判所が行うものではありません。市区町村の措置が認められたことから「DVなどの事実があった」と断定することはできません。DVなどの事実があったかどうかの最終的な判断は、裁判所が行います。
④ 支援措置の内容
市区町村が支援措置を行うと決定した場合、以下の措置を行います。
- DVなどの「加害者」(とされている方)がわかっている場合は、その加害者(とされている方)からの、「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求や申出があっても、閲覧や交付を拒否することになります。
- 加害者(とされている方)からの依頼を受けた第三者から「住民票の写し等の交付」などの申請があった場合には、その請求を認めるかどうかについて、通常よりも厳格な審査が行われます。
- 支援措置が行われている期間内は、(加害者とされている方ではない)第三者からの「住民票の写し等の交付」などの申請に対し、加害者が第三者になりすまして申請をしていないかを確認するため、写真付きの身分証明書の提示を求めるなど、申請をした方の厳格な本人確認が行われます。
⑤ 支援措置の期間
支援措置の期間は、支援措置の申し出をした方に結果を連絡した日から起算して1年間となっています。
1年が経過した後も引き続き支援措置が必要な場合は、延長されることもあります。延長後の支援措置の期間は、延長前の支援措置の期間が終了する日の翌日から数えて1年間となります。延長の申請は、期間終了の1か月前から、行うことができます。申請先は、措置をしている市区町村の窓口です。
支援措置の相手方となってしまった場合の対応
支援措置の相手方(加害者)とされてしまった場合、支援措置そのものを争っても良い結果になることはほとんどありません。置かれた状況を把握して、どのような対応をすべきなのか、見極めることが重要になります。
① 相手方の住民票を閲覧したり取得したりする方法はあるのか?
支援措置の相手方となってしまった場合、相手方の住民票などを閲覧したり、写しの交付を受けたりすることはできなくなります。弁護士に依頼をして住民票の写しの交付などを申請した場合、弁護士限りで開示されるケースはありますが、この場合も、弁護士は、ご本人に取得した住民票の写しなどをお渡しすることはできませんし、記載されている情報をお伝えすることもできません。
以下のとおり、相手方の住所が不明のまま家庭裁判所の手続を利用することができますので、そちらの方法によって対応をすべきことになります。
なお、相手方に弁護士がつくなどしない場合、相手方と交渉を行うことは難しいでしょう。相手方との話し合いは、家庭裁判所の調停を利用して行うことになります。
② 家庭裁判所の手続などを利用したい場合、どうすればよいのか?
行方の分からなくなった配偶者に対し離婚などの請求を行う場合、相手方の住所がわからないため、家庭裁判所の調停手続きなどを利用することができないのではないかという問題が生じます。支援措置を受けている側が調停を申し立ててて来た場合にはこれに応じればよいだけなのですが、なかなか調停の申立などをしてこない場合、支援措置の相手方の側から調停の申立てができないか、検討する必要が生じます。
このような場合について、家庭裁判所は、以下のような対応をすることで、家庭裁判所の調停手続きを利用することができるようにしています。
家庭裁判所への調停の申立書には、以前の住所を記載するか「住所不明」と記載をします。この調停の申立書を家庭裁判所に提出し、その際に「住民票の閲覧制限により、相手方の住所がわからない」ことを、家庭裁判所に伝えます。そうすると、家庭裁判所は、閲覧制限をしている市区町村に照会を行い、連絡先を把握し、必要な書類を送ります(このとき、家庭裁判所が取得をした住所を教えてもらうことは、通常、できません。家庭裁判所限りで情報を得ることになります。)。このような手続きを経て、家庭裁判所から、相手方に対し、呼び出しを行い、調停の手続を進めていくことになります。
③ 支援措置の相手方となった場合、その後の裁判所の手続で、DVなどの事実関係を争うことはできるのか?
支援措置を行うかどうかは、市区町村が判断をします。裁判所が判断をするわけではありません。市区町村も聞き取りや資料に基づいて判断をしますので、支援措置が行われたということは、何らかの証拠があるはずですが、裁判所が、この証拠をどのように評価するかはわかりません。市区町村が支援措置をとった場合でであっても、裁判所が「DVはなかった」と判断することはあり得ます。重要なのは、支援措置を受けたことを争うのではなく、証拠をもって、裁判所を説得することにあります。「支援措置をした行政に反論をする」のではなく、「証拠によって裁判所を説得する」という対応をすることが重要です。
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