「婚約」を破棄されました。責任を追及することはできるのでしょうか?
現在の実務では、「離婚慰謝料」同様に、「婚約破棄」についても慰謝料の請求を認められることがあります。また、婚約破棄によって発生した損害の賠償が認められるケースもあります。
それでは、どのようなケースで「婚約」が成立し、どのようなケースで「婚約を不当に破棄した」といえるのでしょうか?ご紹介していきます。
婚約の成立が認められるのはどのような場合か?
法律上、「婚約」の定義はありません。そのため、「これがあれば婚約の成立が認められる」というものはありません。一般的には、「将来の結婚を約束するまじめで確実な合意があればよい」と考えられており、具体的には、以下のような要素から判断されることになると考えられています。なお、「婚約」の方法については、地域差もあるため、それも考慮しつつ、考えることになります。
- それぞれの両親・家族への紹介
- 指輪の交換
- 結納の授受
- 求婚への応諾
- 長期の肉体関係 など
以上のように、外形的に見て判断できる要素もあれば、外形的にはわからない要素もあります。裁判所は、外形的には、両親・家族などへの紹介をせず、結納もしていないが、「求婚に対し、「夫婦として共同生活を営む意思」で求婚に応じ、長期間肉体関係を続けていた」という事案で、婚約の成立を認めたこともあります(最高裁判所平成38年9月5日判決)。
婚約を破棄した場合、どのような責任が発生するのか?
一般的に、「婚約」は「婚姻」や「内縁」よりは緩やかな関係と考えられており、これらに比べて解消の事由が緩やかに認められるとされています。そのため、婚約を破棄した場合、常に責任を問われるわけではなく、「当事者の一方が正当な理由がないのに婚約を破棄した場合」には、もう一方は損害賠償の請求をすることができる、と考えられています。
「正当な理由がなく婚約を破棄した」と認められる事例としては、不倫をした側からの婚約破棄、民族差別・部落差別による婚約破棄などが典型例です。また、第三者(主に親や親族など)が過剰に介入したことにより婚約破棄に至った場合には、その第三者にも婚約破棄の責任が認められるケースもあります。
婚約を不当に破棄した場合に賠償しなければならない範囲は、慰謝料のみではなく、以下のようなものも含まれると考えられています。
- 慰謝料(精神的苦痛に対する費用)
- 結婚式場のキャンセル代、婚約披露などの費用、仲人への礼金など
- 新婚旅行などのキャンセル代
- 夫婦生活のために購入した家具などの費用
- 結婚のために仕事を辞めたことによる逸失利益(請求することができるのかについて議論あり)
婚約破棄の場合、慰謝料以外の賠償もあるため、賠償額の相場をお話しするのは難しいですが、婚約破棄の慰謝料の額については、事案にもよりますが、数十万円から数百万円程度とされることが多いと言われています。
婚約が破棄された場合、「結納」はどうなるのか?
婚約が調った時点で、将来の婚姻の成立を前提として金品を授受する「結納」が行われることがあります。この「結納」として渡された金品について、婚約が破棄された場合、返還の義務が生じるのかという問題があります。
この点について、裁判所の判断は別れていますが、一般的には、
- 婚約後、結婚が成立し、夫婦共同生活をしたという実態があれば、結納の目的は達成されているため、結納の返還は認めない
- 婚約後、結婚に至らなかった事案では、結納の返還を認める
という傾向にあると考えられています。結婚後、すぐに離婚をしたなど、判別が難しいケースもありますが、例えば、最高裁判所の判決では、結婚式後、8か月間の同居生活があった事案で、結納の返還を認めなかった事案があります(最高裁判所昭和39年9月4日判決。なお、この判決は、8か月が基準になると定めたものではありません。事案に応じて判断することになります。)。
なお、婚約を不当に破棄した側から、結納の返還を求めることができるのか、という問題もあります。この点についての判断は分かれていますが、一般的には、婚約を不当に破棄した側からの請求は「権利の濫用」などとして、認められないという判断になっています。
南池袋法律事務所へのお問い合わせは、
お電話、LINE又はお問い合せフォームをご利用ください。
南池袋法律事務所へのお問い合わせは
お電話、LINE又は
お問い合せフォームをご利用ください。
- 平日10:00〜19:00以外の時間帯はお電話に出られないことがあります。電話がつながらない場合は、お手数をおかけして申し訳ありませんが、LINE又は以下のお問い合わせフォームをご利用ください。
- 南池袋法律事務所では、原則として、メールのみ、LINEのみでの法律相談の対応は行っておりません。法律相談をご希望の場合は、受付完了後、相談日時、方法等について、折り返しご連絡をさせて頂きます。
- 平日10:00〜19:00以外の時間帯はお電話に出られないことがあります。電話がつながらない場合は、お手数をおかけして申し訳ありませんが、LINE又は以下のお問い合わせフォームをご利用ください。
- 南池袋法律事務所では、原則として、メールのみ、LINEのみでの法律相談の対応は行っておりません。法律相談をご希望の場合は、受付完了後、相談日時、方法等について、折り返しご連絡をさせて頂きます。