「民事再生」の「住宅資金特別条項」とはどのような制度なのでしょうか?
「住宅資金特別条項」は、再生手続き(個人再生・民事再生の両方)の両方において利用することのできる制度で、簡単に説明すると「住宅ローンを支払い続けることにより住宅を維持しつつ、住宅ローン以外の債務を一部免除してもらう」という制度です。この制度を利用すると、住宅ローンのついた建物を残しつつ、債務(借金)の整理をすることが可能になります。
ここでは、同制度の説明を行います。
目次
1 住宅資金特別条項の特徴
2 住宅資金特別条項を利用するための要件
① 民事再生手続きを利用すること
② 「個人」である債権債務者が住宅(建物)を所有していること
③ 再生債務者が、自己の居住の用に供するための建物であること
④ 建物の床面積の2分の1が専ら居住の用に供されていること
⑤ 対象となる住宅に住宅ローンを担保するための抵当権が設定されていること
3 住宅資金特別条項の内容
① 住宅ローンを従来のまま支払っていく方法
② 期限の利益猶予型
③ リスケジュール型
④ 元本猶予期間併用型
⑤ 同意型
4 住宅資金特別条項を利用する場合の手続き
① 住宅ローン債権者との協議
② 民事再生申立時の手続
住宅資金特別条項の特徴
住宅資金特別条項(住宅ローン特別条項)は、小規模個人再生や給与所得者等再生など、民事再生の手続において使うことのできる制度です。破産手続きで利用することはできません。「住宅ローンの残っている自宅を手元に残すことができる可能性がある」ことが、個人再生手続きの大きな特徴となっており、事案によっては破産ではなく個人再生を利用すべき理由にもなります。
住宅資金特別条項を利用した場合、住宅ローンについては、3年から5年で返済する債務には含まれないことになり、(住宅ローン債権者の同意がない限り)減額もされないことになります。
なお、住宅ローン特別条項を使うかどうかは、債務者(再生手続きを行う方)が選ぶことができます。住宅が不要な場合や既に住宅を売却しているような場合には、住宅ローンも再生債権に含める選択をすることもできます。このような選択をした場合、(通常)住宅を失うことになりますが、住宅ローンの債務についても一部免除を受けることができます。
住宅資金特別条項を利用するための要件
住宅資金特別条項を利用する場合の要件は以下のとおりです。
① 民事再生手続きを利用すること
住宅資金特別条項は民事再生手続きにおいて特別に認められている制度です。破産手続きなどで利用することはできません。
② 「個人」である債権債務者が住宅(建物)を所有していること
「法人」が所有する住宅については、住宅資金特別条項を利用することはできません。
「所有」は「共有」でもよいとされています。持ち分について制限はなく、例えば100分の1の持ち分であってもよいとされています。
一方、建物敷地の敷地のみ所有しているような場合には、この要件を満たさないことになります。
③ 再生債務者が、自己の居住の用に供するための建物であること
他人に賃貸する目的で所有する投資用不動産などに関する住宅ローンについては、住宅資金特別条項を利用することはできません。複数の建物を所有している場合、「主として居住の用に供している」建物についてのみ、住宅資金特別条項を利用することができます。
④ 建物の床面積の2分の1が専ら居住の用に供されていること
店舗兼住宅などの場合には、その建物の床面積の2分の1以上の部分が「住宅」であることが求められます。
⑤ 対象となる住宅に住宅ローンを担保するための抵当権が設定されていること
住宅の建設・購入・住宅の改良のために借り入れた債務の抵当権が住宅に設定されていることが必要です。
一方、住宅を担保に入れて事業資金を借り入れた場合などについては、この制度を利用することはできません。また、住宅ローンの抵当権とその他の借り入れの抵当権の両方が設定されているような場合にも、この制度を利用することはできません。
住宅資金特別条項の内容
住宅資金特別条項を利用する場合、その内容をどのように設定するかは、法律で定められています。実際には、現状の住宅ローンをそのまま支払っていくという内容を定めることが一般的ですが、事案によっては、その他の条項を定めることもあり得ます。
① 住宅ローンを従来のまま支払っていく方法
住宅ローンの支払が遅れていない場合には、裁判所の許可を得て、今まで通り、住宅ローンを支払っていくことになります。他の債務のように債務の額が減らされることもなく、3年~5年で返済するというわけでもなく、これまで通り、支払っていくということになります。
② 期限の利益猶予型
住宅ローンの滞納があった場合、延滞していた元金・利息・遅延損害金を支払うことにより、失っていた期限の利益を復活させることができるというものです。
既に住宅ローンを保証している保証会社が保証債務の支払いを行っている場合であっても、保証債務が履行されてから6か月以内に民事再生の申立てを行うことにより、住宅資金特別条項を利用することができます。
③ リスケジュール型
期限の利益の猶予だけでは住宅ローンの支払が厳しい場合に、住宅ローンの返済の期間を延長するものです。延長の期間は10年以内に限られており、かつ、最終の支払の時期が満70歳を超えることはできません。
④ 元本猶予期間併用型
「リスケジュール型」を利用してもさらに支払いが難しい場合に、3年から5年の範囲内で元本の返済の一部を猶予してもらうというものです。支払いを全て停止するということはできませんし、利息の支払いの義務も発生します。また、返済総額が減るわけではありません。
⑤ 同意型
住宅ローン債権者の同意を得ることができれば、上記①から④とは無関係に、自由に返済条件を定めることができます。ただし、住宅ローン債権者の同意を強制することはできません。住宅ローン債権者と話し合い、同意を得ることが必要になります。
住宅資金特別条項を利用する場合の手続き
① 住宅ローン債権者との協議
住宅資金特別条項を利用する場合、必ず、住宅ローン債権者と事前の協議をしておかなければなりません。住宅ローンの返済をそのまま続ける場合であっても、協議をしておかなければならないことになっています。
② 民事再生申立時の手続
民事再生の申立の際に住宅資金特別条項を利用しようとする場合には、申立ての際に提出する債権者一覧表に「住宅資金特別条項を利用する」ことを記載しなければならないとされています。民事再生手続きの途中から住宅資金特別条項を利用するということはできません。
なお、住宅資金特別条項を利用する場合、再生手続開始の際に裁判所より「一部弁済許可」を得ておく必要があります。この許可を受けなければ、再生手続開始の後に住宅ローンの支払を続けることができなくなり、住宅を失うことにつながってしまいます。
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