「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の違いはどこにあるのでしょうか?
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類の手続があります。どちらの手続を利用するかは、申立てをする方(債務者)が決めることになります。どちらの手続にもメリット、デメリットがありますので、申立てを行う際には、事案に応じ、適切な方を選択する必要があります。
ここでは、両手続きの違いをご説明し、どちらを、どのようなときに利用すればよいのか、説明します。
両手続きの違いはどこにあるのか?
両手続きについて、もう一方の手続では要求されない要素をまとめると、以下のとおりとなります。
小規模個人再生 | 給与所得者等再生 | |
---|---|---|
要件 | - | 給料など、変動の幅が小さい定期的な収入があること |
最低弁済額 | - | 可処分所得に基づく最低弁済額の要件が追加される |
再生計画案についての債権者の同意 | 債権者の過半数の同意が必要 | 意見を聞くだけでよく、同意は不要 |
以下、詳しく説明します。
① 要件の違い
「給与所得者等再生」を利用するためには、「変動の幅が小さい給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること」という要件を満たす必要があります。「給与所得者等再生」は、主にサラリーマンなど、定期的な給料をもらっている方が利用することを想定した手続です。
なお、年収の変動が少ない方であれば、パート従業員の方や自営業者であっても「給与所得者等再生」を利用することができる場合もあります。法律上、「変動の幅が小さい」とは、「将来の再生計画の履行中の収入の変動幅が年間で5分の1を超えていない場合」のことをいうとされています。この要件を満たす見込みがある場合には、給与所得者でなくとも「給与所得者等再生」を利用することができます。
② 最低弁済額
「給与所得者等再生」については、可処分所得に基づく最低弁済額の要件が追加されることになります。個人再生を行う場合には、本来、債務者の収支状況を見て、いくら返済させることが妥当なのか検討することになりますが、「給与所得者等再生」を利用する場合、これを定型的に計算することになっています。この「可処分所得」とは、「再生債務者の1年分の収入合計額から、これに対する所得税・個人の道府県民税または都民税・個人の市町村民税または特別区民税・社会保険料に相当する額および再生債務者とその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した金額のこと」をいいます。「給与所得者等再生の再生計画に定めることができる返済総額(計画弁済総額)は、可処分所得の2年分以上の額でなければならない」と規定されています。
上記の計算方法で「可処分所得」を計算するため、独身の方や高額所得者の方は、可処分所得が大きくなり、返済しなければならない金額が高額になってしまいます。そのため、このような方については、「給与所得者等再生」の要件を満たしている場合であっても、「小規模個人再生」を利用した方が、返済額が小さくてよいという場合があります。この場合に「小規模個人再生」を選択することは、債務者の自由です。
③ 再生計画案についての債権者の同意
「小規模個人再生」の場合、再生計画案に対する再生債権者の書面決議が行われ、書面により不同意回答をした議決権者が、議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権者の議決権額が議決権者の議決権額総額の2分の1を超えない場合には、再生計画案が可決されたものとみなすとされています。つまり、以下のような場合には、再生計画案が否決されてしまい、個人再生の手続を進めることができなくなります。
- 書面により不同意回答をした議決権者の頭数が、議決権者総数の半数以上であった場合
- 書面により不同意回答をした議決権者が有している債権の総額が、全議決権者の議決権額総額の過半数以上であった場合
一方、「給与所得者等再生」の場合、債権者の同意は不要とされています(意見聴取のみ行われますが、同意は不要です。)。この「債権者の同意が不要とされていること」が「給与所得者等再生」を利用する場合のメリットとなります。
どちらの手続を選択すべきか?
先ほどもお話ししたとおり、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」のどちらを利用するかは、申立てをする債務者が決めることになります。そのため、どちらを選択すべきか、検討しなければなりません。具体的な事案における選択は弁護士にご相談いただく方がよいかと思いますが、ここでは、簡単に、選択の基準をお話しします。
① 給料などの安定した収入がない場合
先ほどもお話ししたとおり、「給与所得者等再生」を利用するためには、「変動の幅が小さい給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること」という要件を満たす必要があります。そのため、収入の変動が大きい方は、「給与所得者等再生」を利用することができず、「小規模個人再生」を選択しなければならないということになります。
② 可処分所得が高額になる場合
「給与所得者等再生」については、可処分所得に基づく最低弁済額の要件が追加されることになります。これを計算した結果、最低弁済額が高額になる場合には、「小規模個人再生」を利用することになります。具体的な可処分所得の計算については、裁判所が「可処分所得計算シート」を公表している例もあります。
③ 再生計画案への反対意見が予想される場合
「給与所得者等再生」を利用する一番のメリットは、再生計画案についての債権者の同意が不要となる点です。債権者が不同意の意見を述べることが予想される場合には、「小規模個人再生」ではなく、「給与所得者等再生」を利用できないか、検討すべきことになります。
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