成年後見人等の不祥事への対策

 残念ながら、専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)の成年後見人等が、被後見人等の財産を横領したというニュースを聞くことがあります。このような報道もあって、「成年後見制度は危険だ」「利用すべきでない」という、ネガティブなイメージを持たれている方も多いと思います。

 ここでは、成年後見人等による不祥事の実情をご説明し、また、どのような不祥事対策が行われているのかについて、解説を行います。

目次

1 成年後見人等による不祥事の実情
2 家庭裁判所による対策
3 各専門職団体による監督
4 後見人等の不祥事が疑われる場合の対応

成年後見人等による不祥事の実情

 まず、最高裁判所事務総局家庭局が実施している「後見人等による不正事例についての実情調査」の結果をご紹介させていただきます。この調査は毎年行われているもので、記事執筆時点(令和4年5月)での最新の調査結果は、令和3年分となります。

 この報告書によると、令和3年1月から同年12月までの12か月間の後見人等による不祥事(家庭裁判所が後見人等の事務の問題を把握して、解任などの処置をとった事例)は、

・ 件  数 169件
・ 被害総額 5億3000万円(100万円単位四捨五入)

であったとの結果が示されています。

 また、上記の件数のうち、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職の後見人等による不祥事は、

・ 件  数 9件
・ 被害総額 7000万円(100万円単位四捨五入)

となっています。

 もちろん、後見人等による不祥事は、本来0件であるべきなので、1件でも不祥事が報告されることは好ましくないことです。しかしながら、後見人等による不祥事の件数は、決して多くないこと、また、後見人等による不祥事の大半は親族後見人によるものであり、専門職後見人による不祥事の件数はかなり少ないということ、については、覚えておいていただければと思います。

家庭裁判所による対策

 後見人等の監督を行うのは家庭裁判所の業務ですので、後見人等の不祥事を防止するためには、家庭裁判所が適切に監督権限を行使する必要があります。

 家庭裁判所は、通常、年に1回(多くは、被後見人等の誕生月)、後見人等に定期報告を求めます。家庭裁判所は、基本的には、この報告書の内容から、不祥事の確認をしていくことになります。この報告書の内容に問題がありそうな場合や報告書の提出が遅れた場合などは、家庭裁判所は、後見人等に追加の報告を求めたり、専門職の後見監督人を選任たり、調査人に調査をさせたりすることになります。

 調査人について少し詳しく説明をすると、調査人とは、その名のとおり、後見人等の事務やご本人の財産の状況を調査する者のことをいいます。「裁判所は、適当な者に、成年後見の事務若しくは成年被後見人の財産の状況を調査させ、又は臨時に財産の管理をさせることができる」(家事事件手続法124条1項)とされており、この調査や管理をする人のことを、一般に「調査人」と呼んでいます。

 家庭裁判所は、期限までに後見事務報告書の提出がない場合や提出された報告書の内容に不足や矛盾などがあり調査が必要と判断した場合などに調査人を選任することがあります。調査人を誰にするかは家庭裁判所が決定しますが、通常、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれます。調査人は、裁判所から指示された調査事項に応じ、後見人等から事情を聴く、ご本人から事情を聴く、預金通帳・現金出納帳・領収書などの必要書類を確認するなどして、その調査結果を家庭裁判所に報告します。家庭裁判所はこの報告に基づき、後見人等を解任したり、後見監督人等を選任したりします。

 なお、調査人は、家庭裁判所の決定により、ご本人の財産から報酬を受け取ります(家事事件手続法124条2項)。

 他にも、家庭裁判所は、不正があり得そうな事案については、報告書の提出を求める回数を増やす(例えば半年に1回など)、弁護士会などの団体との間で協定を結び不祥事の情報を共有するなどして、後見人等に対する監督を行っています。

各専門職団体による監督

 専門職の後見人については、家庭裁判所以外にも、弁護士であれば弁護士会、司法書士であれば司法書士会(リーガルサポート)、社会福祉士であれば社会福祉士会(ぱあとなあ)からの監督を受けます。

 まず、どの団体についても、後見人等の候補者となるためには、一定の研修を受けなければならないとしていることが通常です。この研修において、後見人等の業務や、守らなければならないルールを学びます。これらの研修を受けて、はじめて、後見人等の候補者として、家庭裁判所の作成する名簿に登載されることが通常です。また、多くの団体では、名簿登載後も、定期的に研修を受けることを義務付けています。さらに、最近では、厚生労働省が実施している「意思決定支援研修」の受講を名簿登載要件にするという動きもあります。

 後見人等に就任をした後の監督については、各団体によって異なります。家庭裁判所への報告書と同じものを専門職団体にも提出するようにし、専門職団体でもダブルチェックをするという体制を整えている、はじめて後見人等に選任される方については、既に複数の後見人等に選任された経験のある者の監督を受けながら業務を行うなど、それぞれの専門職団体により、独自の監督制度を設けていることもあります。

 また、例えば、弁護士会は、成年後見人による不祥事があった場合に備え、不祥事の被害を受けた方に支払われる保険金の制度を準備するなどしています。詳しくは、「弁護士成年後見人信用保証事業」と検索をしてみてください。

 他にも、地域によりますが、定期的に家庭裁判所と専門職団体との間で協議をする機会を設け、不祥事の情報を共有するなどしています。

 このように、各専門職団体も、それぞれ、後見人等による不祥事を防止するための対策をしており、その対策は、年々、強化されています。

後見人等の不祥事が疑われる場合の対応

 先ほどもお話ししたとおり、後見人等の監督を行っているのは家庭裁判所です。そのため、後見人等の不祥事に関する情報は、家庭裁判所に報告すべきです。ただし、口頭での報告のみでは家庭裁判所が動く可能性はあまり高くないと思われますので、後見人等による不正行為を疑わせるような資料などを提出するなど、家庭裁判所に動いてもらう必要があるでしょう。

 ご本人(成年被後見人・保佐人・補助人)、ご本人の親族、後見・保佐・補助監督人(、検察官)は後見人等の解任を請求する権利を持っていますので(民法846条)、「後見人(等)に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由がある」ことを主張して、家庭裁判所に後見人等の解任の請求を行うことができます。なお、以下の点に注意が必要です。

・ 後見人等が親族の希望を聞いてくれない、後見人等が気に入らないという理由では、解任は認められません。
・ 後見人等が解任されても、後見制度の利用が終了するわけではありません。後見人等が解任されると、別の後見人等が就任します。

 また、家庭裁判所は、職権で、つまり、誰からの請求もなく自ら、後見人等を解任することもできます。家庭裁判所が報告書などから不正行為を把握した場合には、職権で、後見人等を解任することがあります。

 上記に記載をした以外の方は、後見人等の解任を請求することはできません。後見人等の不正行為を発見されたケアマネージャーさん、ヘルパーさん、医療関係者の方、地域包括支援センターの方、社会福祉協議会の方などは、家庭裁判所に情報提供をしていただくか、後見人等の解任請求の申立ての権利を持っている方に事情を伝えるなどの対応をすることになります。

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