成年後見制度を利用すると選挙権や資格などを失うことになるのか

 成年後見制度の利用を検討されている方の中には、成年後見制度を利用することにより、「選挙権を失うのではないか?」「資格を失うのではないか?」と心配されている方もいらっしゃると思います。この点について、現在の制度はどのようになっているのか、説明をさせて頂きます。

目次

1 選挙権の行使
2 資格の制限・就職の制限
3 自動車運転免許

選挙権の行使

現在は、成年後見制度を利用しても、選挙権を失うことはありません。
成年後見人・保佐人・補助人がご本人に代わって選挙権を行使するということもなく、ご本人が、自らの意思で、選挙権を行使することができます。

 以前は、公職選挙法で「成年被後見人は、選挙権及び被選挙権を有しない」という規定になっていました。しかしながら、この規定は憲法に違反しているのではないかとの指摘があり、実際に憲法違反を認めた判決もありました(東京地方裁判所平成25年3月14日判決)。これを受け、平成25年5月、「成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し」、公布されました。この規定は、平成25年6月30日に施行されています。なお、あわせて、病院や老人ホームなどで不在者投票を実施する場合の規定も整備されました。

 これにより、平成25年7月1日以後に公示・告示される選挙については、成年被後見人も、選挙権・被選挙権を有することになっています。選挙権・被選挙権は、ご本人の判断で行使することになります。成年後見人等が代わって行使することはありません。筆者が成年後見人に就任している事案でも、ご本人が、ご自身の判断で、選挙権を行使されています。役所で成年後見人の登録をすると選挙に関する手紙・封書などが成年後見人等の所に送られてくることもありますが、成年後見人は、この書類をご本人にお渡ししなければなりません。

資格の制限・就職の制限

現在は、成年後見制度を利用するのみでは、各種資格を失ったり、一定の仕事に就けなくなるということはなくなりました。
今後は、ご本人の能力を見て、資格を認めるかどうか、就職を認めるかどうかを個別に判断していくことになります。

 従来は、選挙権・被選挙権と同じく、成年後見制度のうち、後見又は保佐を利用すると、医師・弁護士などの資格を失ったり、国家公務員・地方公務員・警備員などに就職することができないということを、それぞれの法律で規定されていました。しかし、これらの制限も、選挙権の制限同様、問題があるのではないかということになり、令和元年6月7日、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。また、令和3年3月1日には、会社法の規定も改正され、後見及び保佐を利用している方も、会社の取締役に就任することができるようになりました。これらにより、後見・保佐を利用しただけでは、各種資格を失ったり、特定の仕事に就くことができなくなるということはなくなりました。

 ただし、選挙権・被選挙権とは異なり、後見又は保佐を利用した方が、常に各種資格を維持できるというわけではありませんし、常に公務員などの仕事に就くことができるというわけではありません。資格の維持を認めるか、就職を認めるかは、個別の事案に応じ、その資格を審査する団体や就職先が決めることになります。例えば、弁護士の場合、弁護士の資格の判断をする組織である弁護士会が、ご本人の能力を確認し、弁護士の資格を維持するか抹消するかを決定することになっています。個別の審査では、「心身の故障により業務を適正に行うことができないかどうか」などの判断をすることになります。

 以上のように、成年後見制度を利用している方も、ご自身の能力を活かし、活動することができる範囲が広まりました。今後は、ご本人の、個別具体的な能力に応じ、資格の維持や就職の可否を決定していくことになります。成年後見制度を利用したことにより、一律に資格や就職を制限されることはありません。

自動車運転免許

 「成年後見制度」を利用すると自動車運転免許をはく奪されるのではないか?との質問を受けることがあります。これについては、「成年後見制度を利用するだけでは自動車運転免許をはく奪されることはありません」というお答えになります。

 この点については、上記の各法律が改正される前から、成年後見制度と自動車運転免許はリンクをしていませんでした。そのため、法律改正の前から、後見や保佐を利用しても、自動的に自動車運転免許をはく奪されるということはありませんでした。自動車運転免許の維持を認めるかは、認知機能検査の結果などによって判断されます。

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