亡くなられた方の遺言を発見したらどのような手続きを取らなければならないのでしょうか?
亡くなられた方が遺言を作成されていた場合、亡くなられた方の財産は遺言に書かれているとおりに引き継がれていくことになります。それでは、実際に財産を引き継いでいく手続きはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、遺言がある場合の手続について、お話をさせて頂きます。
遺言が「公正証書」で作成されている場合
① 特別な手続きは不要です
遺言が公正証書で作成されている場合、特別な手続きは不要です。遺言書に書かれている内容にしたがって、銀行や法務局などで必要な手続きを進めていくことになります。銀行などでの手続はそれぞれの銀行などによって異なっていますので、各銀行の窓口などにお問い合わせ下さい。
② 遺言執行者が定められている場合
公正証書遺言の場合に限られませんが、遺言を遺された方が、その遺言の中で「遺言執行者」の定めをしていることがあります。
「遺言執行者」とは、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする」方です(民法1012条1項)。相続人のうちの1人が遺言執行者に就任する場合もあれば、第三者が遺言執行者に就任する場合もあります。未成年者・破産者を除き、誰でも遺言執行者になることができます(民法1009条)。弁護士や司法書士などの専門家が遺言執行者になる場合もあります。遺言執行者が指定されている場合、相続人は、勝手に相続財産に手を付けることはできません(民法1013条1項)。相続人が遺言執行者を無視してした相続財産の処分などは無効です(同条2項)。
以上のとおり、遺言の中で遺言執行者が指定されている場合、相続人の方々が勝手に手続きを進めることはできません。遺言執行者が必要な各種手続きを進めていくことになります。
なお、遺言の中で遺言執行者が定められていない場合であっても、相続人などの利害関係人が遺言執行者が必要と考えた場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任するよう求めることができます(民法1010条)。
- 遺言が公正証書で作成されている場合、特別な手続きをする必要はなく、銀行・法務局などの手続を進めていくことができる。
- 遺言執行者が指定されている場合、手続きは遺言執行者が進めていくことになるため、相続人が勝手に相続の手続等を進めることはできない。
遺言が公正証書以外(自筆証書遺言など)で作成されている場合
① 「検認」の手続が必要になります
遺言が公正証書以外で作成されている場合、家庭裁判所で「検認」という手続きを行う必要があります(民法1004条1項)。具体的な手続きは以下のとおりです。ただし、「自筆証書遺言保管制度」を利用している場合は、以下の検認の手続は不要となり、公正証書遺言同様、すぐに次の手続に進むことができます。
② 検認の手続の流れ
遺言の検認の流れは以下のとおりです。
遺言書を保管している方、または遺言を発見した方は、遺言を作成した方が亡くなった後、遅滞なく(簡単にいうと「なるべく早く」という意味です。)遺言書を家庭裁判所に提出しなければなりません。提出する家庭裁判所は、遺言を作成した方が最後に住んでおられた場所を管轄する家庭裁判所です。封のされている遺言書は、家庭裁判所で開封をするので、勝手に開封してはなりません。
家庭裁判所は、検認の申立てを受け付けると、各相続人に対し、検認を行う日を通知します。検認の申立てをした方はこの検認の期日に参加をしなければなりませんが、その他の相続人は出席しても出席しなくてもよいこととなっています。相続人全員がそろわなくても検認の手続は行われます。
検認を行う日になると、家庭裁判所の裁判官は、出席している相続人の方の立ち合いの下、遺言を確認します。封がされている遺言書は、裁判官が開封をします。
検認が終了した後は、家庭裁判所から検認済証明書を受け取り、必要な手続きを進めていきます。
以降の手続は公正証書遺言の場合と同じです。遺言執行者の指定がある場合の手続も、公正証書遺言の場合と同じです。
自筆証書遺言については、以上の検認の手続を行い、裁判所の「検認済証明書」の発行を受けなければ、銀行での手続きや不動産の名義変更の手続きなどを行うことはできません。
- 遺言が公正証書以外で作成されている場合、家庭裁判所で「検認」という手続きをしなければならない。
- 検認後の手続は、公正証書遺言の場合と同じ。
遺産の名義変更などの手続き
公正証書遺言の場合や「検認」が終了した後の手続きについては、遺言の内容によって異なります。
預金口座等の解約や株式・投資信託などについては、各銀行・証券会社によって必要な手続きが異なります。詳しくは銀行・証券会社などにお問い合わせください。保険契約についても、各保険会社に問い合わせをしていただくことになります。
土地・建物などの不動産については、名義の書き換えが必要です。法務局にお問い合わせいただくか、司法書士にご相談を頂くことになります。
その他、手続きは財産の種類やその財産を保管している会社・場所などによって様々です。わからない点がありましたら、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
遺言の無効を主張する場合
例えば、認知症により判断能力を失った後に遺言を作成したような事案など、遺言の有効性が問題となる事案があります。このような場合、遺言の効力を争っていくことになります。なお、公正証書で作成された遺言であっても無効となることはあり得ます。
遺言が無効であると考える場合、家庭裁判所の調停を利用することもあり得ますが、遺産分割調停の中では、当事者全員が遺言が無効であることに合意をした場合を除き、遺言の有効性について判断をすることができません。そのため、遺言の有効性について争いがある場合には、原則、民事訴訟(遺言無効確認訴訟等)で争っていくことになります。遺言の有効・無効が確定した後、さらに遺産分割の必要がある場合には、その後に遺産分割調停を利用することは可能です。
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