内縁関係の場合、内縁配偶者に相続をする権利はあるのか

 日本では、婚姻届けを提出しない限り、婚姻をしているとは認められません(民法739条)。事実上、夫婦として生活をしていても、婚姻届けを提出していない場合は、婚姻をしているとは認められません。このような、事実上の夫婦関係を「内縁」と呼び、特に内縁の解消の場面では、裁判所は、婚姻関係がある場合と同じように財産分与や慰謝料請求などの権利を認めることがあります。

 一方で、死別の場合、扱いはどうなるのでしょうか。ここでは、内縁関係にあった方(内縁配偶者)と死別した場合、相続はどうなるのか、解説します。

目次

1 裁判所の考え方
2 遺言による対策
3 遺言以外の方法はあるのか
4 公的な補償について

裁判所の考え方

 「内縁配偶者に相続をする権利があるのか」という点について、裁判所は、「内縁配偶者には相続権がない」としています。裁判所の考え方は以下のとおりです。

【最高裁判所平成12年3月10日決定】
  内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法768条の規定を類推適用することはできないと解するのが相当である。民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地もない。したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざるを得ない。

 以上のように、裁判所は、

① 離別の場合には、財産分与の規定を類推適用し、財産の分割を認めることがある
② 死別の場合には、相続の規定の適用はなく、財産を引き継ぐことはできない

という判断をしています。そして、裁判所は、死別の場合に財産分与の規定を適用することはないとも判断しています。

 以上のとおり、現在の裁判所の判断を前提にすると、婚姻届けを提出していない、内縁の関係にある方は、内縁配偶者が死亡した場合に、法律に従った相続を受けることはできないということになります。そのため、内縁の関係にある方に自分の財産を引き継いでほしいと考える場合には、生前に、対策をしておかなければならないことになります。生前の対策を行わないまま死亡してしまうと、内縁配偶者には、何の権利も認められないということになりかねません。

 なお、内縁配偶者との間の子については、認知をすれば法律上の親子関係が生じますので、相続権が発生します。また、内縁配偶者の連れ子については、養子縁組をすることで法律上の親子関係を生じさせ、相続権を発生させることができます。

  • 内縁配偶者には、相続を受ける権利は認められていない。
  • 内縁配偶屋は、離別の場合には財産分与請求権が認められるケースはあるが、死別のケースでは、財産分与請求は認められない。
  • 内縁配偶者に財産を引き継がせるようにするためには、生前に対策をしておかなければならない。

遺言による対策

 内縁配偶者に財産を引き継がせる方法として、最も一般的な方法は、遺言を作成しておくことです。遺言を作成すれば、民法で決められている相続人(法定相続人)以外の方に財産を引き継がせることができます。内縁配偶者に財産を引き継がせることも、もちろん可能です。

 ただし、遺言を作成したとしても、「遺留分」の権利を消滅させることはできません。遺留分は、法定相続人が最低限相続できる財産として、民法に規定されているもので、亡くなられた方の配偶者・子・直系尊属(親など)が持つ権利です。特に注意をしなければならないのは戸籍上の配偶者と離婚をしていない場合です。戸籍上の配偶者は、遺産の4分の1について遺留分を有しています。遺言によって内縁配偶者にすべての財産を相続させた場合も、戸籍上の配偶者が遺留分の権利を行使した場合には、内縁配偶者は、遺産の4分の1(の価格)について、戸籍上の配偶者に渡さなければならなくなります。

 また、内縁配偶者は法律上の配偶者ではないため、相続税について「配偶者に対する相続税額の軽減制度」を受けられないなどの違いが出てきます。詳しくは税理士などにご相談されるようにして下さい。

  • 内縁配偶者に財産を引き継がせるようにするためには、遺言を作成しておくべき。
  • 遺言を作成したとしても、遺留分の権利を侵害することはできない。特に、戸籍上の配偶者と離婚をしていない場合は注意が必要である。

遺言以外の方法はあるのか

 内縁配偶者に財産を引き継いでもらう方法として、他に考えられる制度として以下のような制度の利用が考えられます。

① 生前贈与

 贈与の相手方も、贈与をする方が自由に選ぶことができますので、内縁配偶者に対して生前贈与をすることも可能です。ただし、贈与の場合、税金について、相続の場合と基礎控除の額が異なります。多額の贈与税が科されることもあり得ますので、生前贈与を検討される場合には、税理士のアドバイスを受けることをお勧めします。

 なお、内縁配偶者に死因贈与することも可能です。

② 生命保険金の受取人を内縁配偶者に指定する

 生命保険金の受け取りは相続とは別のものとして扱われるので、相続人以外が生命保険金の受取人となることもあり得ます。生命保険金の受取人を内縁配偶者と指定することができるかは、各保険会社にお問い合わせ下さい。

③ 内縁配偶者の居住権

 死亡した内縁配偶者が自宅を賃貸していた場合、他方の内縁配偶者がこの借家契約を引き継ぐことができる場合があります(最高裁判所昭和42年2月21日判決参照)。

 また、死亡した内縁配偶者が自宅を所有していた場合、その自宅は死亡した内縁配偶者の相続人に相続されますが、事案によっては、その相続人から他方内縁配偶者への建物の明渡請求が権利濫用とされることがあり得ます(最高裁判所昭和39年10月13日判決)。

④ 特別縁故者

 死亡した内縁配偶者に法定相続人がいない場合や法定相続人全員が相続放棄をした場合などは、相続人が不存在となります。この場合、死亡した内縁配偶者の財産は、国のものとなります(国庫帰属)が、他方の内縁配偶者が「特別縁故者」と認められる場合、財産の全部又は」一部を取得できる場合があります。

民法958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)
 前条の場合(相続の権利を主張する者がいない場合)において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
 前項の請求は、第958条の期間の満了後3か月以内にしなければならない。

この特別縁故者の請求をするためには、家庭裁判所の手続により相続財産の管理人を立て、さらに特別縁故者であることを家庭裁判所に申出し、さらに家庭裁判所に「特別縁故者である」と認めてもらうことが必要になります。このように手続きが複雑となりますので、内縁配偶者が亡くなり、相続人が不存在というケースでは、まず、弁護士に相談され、今後の手続を確認されることをお勧めします。

公的な補償について

 内縁の配偶者には相続権が認められない一方で、公的な補償については、内縁配偶者が、婚姻届けを提出している配偶者との死別の場合と同じように受給できることもあります。例えば、厚生年金保険法には、以下のような規定があります。

厚生年金保険法(用語の定義)3条
 (省略)
 この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

なお、裁判所は、このような規定について、「民法上の配偶者の概念と同一にする必要はない」と判断したことがあります(最高裁判所平成19年3月8日判決)。

 他にも、労災給付などにおいても内縁配偶者に受給資格が認められています。詳しくは、それぞれの手続を管轄する役所に確認をされてください。

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