「養育費」の請求を考えています。「養育費・婚姻費用算定表」はどのように使えばよいのでしょうか?

 離婚後、別れて暮らす未成熟の子(通常、20歳未満の子)に対して支払うべき生活費のことを「養育費」と呼びます。

 現在の家庭裁判所の実務では、養育費の決定は、多くの事案で「養育費・婚姻費用算定表」にしたがって行われています。裁判外の交渉でも、弁護士などの専門家が入った場合には、この「養育費・婚姻費用算定表」を参考に養育費の額を決めていくことが一般的です。養育費について弁護士に相談をしたとき、「算定表ではこのようになっている」という説明を受けられた方もいらっしゃると思います。

 この「養育費・婚姻費用算定表」は裁判所のウェブサイトで見ることができ、表を見ることで簡単に養育費・婚姻費用の額を予測することができます。それでは、この表は、何に基づいて作成されているのでしょうか?ここでは、家庭裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」の考え方を簡単にご説明します。

 ここでは、令和元年12月23日に公表された「改定標準算定表(令和元年版)」について解説します。これ以前に使用されていた算定表も考え方は同じですが、数値は異なります。

「養育費・婚姻費用算定表」の使い方

 養育費・婚姻費用算定表は、裁判所のウェブサイトに掲載されています。裁判所ウェブサイト内の「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」というページにPDFファイルで公開されています。

 上記の裁判所ウェブサイトをご覧いただければわかるかと思いますが、

① 「養育費」(離婚後)か「婚姻費用」(結婚中)か
② 子(原則として20歳未満)が何人いるか
③ 子が15歳以上か15歳未満か

によって使う表が決まります。「養育費」は、離婚後(又は未婚で認知をした場合)の子に対する扶養料のことを意味し、「婚姻費用」は、婚姻期間中(又は内縁関係中)の、(別れて暮らす)配偶者と子に対する扶養料のことを意味します。一般的には、婚姻期間中は「婚姻費用」の表を、離婚後は「養育費」の表を使うことになります。「養育費」・「婚姻費用」の詳しい説明は、以下のリンク先をご覧ください。

 なお、子が4人以上の場合の算定表は掲載されていませんが、この場合も計算式を利用することにより、養育費の額を決めることが可能です。なお、義務者(養育費を支払う義務を負う側)の年収が2000万円を超える/権利者(養育費を請求する側)の年収が1000万円を超えるようなケースについては、養育費の請求が可能なことに争いはありませんが、具体的な金額の算定方法については見解が分かれています。

 使う表が決まったら、まず、権利者(養育費を請求する側)と義務者(養育費を支払う義務を負う側)の年収を算定します。年収は、以下の資料により算出することが一般的です。

・ 給与所得者

 源泉徴収票の「支払金額」(又は課税証明書の「給与の収入金額」)の欄に記載されている金額。源泉徴収票がない場合、給与明細などの資料から計算する。

・ 自営業者

 確定申告書(の控え)の「課税される所得金額」の欄に記載されている金額+税法上控除されているものの金額(後述)

 権利者と義務者の年収を算出したら、義務者については縦軸の目盛りを、権利者については横軸の目盛りを、それぞれ確認します。給与所得者の場合と自営業者の場合で使用する目盛りが異なるので注意が必要です。縦軸で義務者の年収額を探してそこから右方向に線をのばし、横軸で権利者の年収額を探して上に線をのばし、この二つの線が交差する欄の金額が、義務者が負担すべきとされる養育費の標準的な月額となります。

 例えば、養育費・子1人(子の年齢が0から14歳の場合)で
・ 義務者が給与所得者で年収500万円
・ 権利者が給与所得者で年収200万円
だとすると、両者が交わるのは「4~6万円」の中間付近になります。この場合、1か月の標準的な養育費の月額は、5万円程度と算定されることになります。

 以上が、簡易的な養育費の計算方法です。より詳しく計算する場合は、以下のように、計算式に当てはめて計算をしていくことが可能です。

「養育費・婚姻費用算定表」の考え方

 次に、「養育費・婚姻費用算定表」の、計算の方法について、ご説明します。なお、以下の説明は「養育費」についての説明になります。「婚姻費用」についての説明は、以下のリンク先をご覧ください。

 「養育費・婚姻費用算定表」の計算は、以下の計算式で行われています。
 なお、以下の計算式において、「権利者」とは養育費を請求する側を指し、「義務者」とは養育費を支払う義務を負う側を指します。

① 基礎収入を算定する

  【総収入×基礎収入割合】
  給与所得者の場合:総収入×0.38(高所得)~0.54(低所得)
  自営業者の場合 :総収入×0.48(高所得)~0.61(低所得)

② 配偶者・子の生活費を計算する

  【(「義務者」の基礎収入+「権利者」の基礎収入)×(「権利者」の生活費指数+子の生活費指数)÷(「義務者」の生活費指数+「権利者」の生活費指数+子の生活費指数)】

 生活費指数は以下のとおり
 大人(義務者・配偶者):100
 15歳未満の未成熟子:62
 15歳以上の未成熟子:85

③ 義務者の養育費分担額を計算する

  【配偶者及び子の生活費(②で計算した額)-権利者の基礎収入】

 ここで算出された額が、婚姻費用・養育費の年額になる。月額は、これを12で割った額になる。

 以下、それぞれの項目について解説を行います。

基礎収入の計算

 まず、最初に、「権利者」(養育費を請求する側)と「義務者」(養育費を支払う義務を負う側)の「基礎収入」を算出します。

 基礎収入は、「総収入」に一定の割合を掛けることでことで算出します。

① 総収入の計算

 まず、「総収入」は、原則として、以下の資料を参考に計算されています。

・ 給与所得者

 源泉徴収票の「支払金額」(又は課税証明書の「給与の収入金額」)の欄に記載されている金額

・ 自営業者

 確定申告書(の控え)の「課税される所得金額」の欄に記載されている金額+税法上控除されているものの金額(後述)

 給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を「年収」とします。源泉徴収票がない場合などは給与明細などによって算定することになりますが、給与明細だと賞与(ボーナス)が含まれていない、月収に変動がある場合それをどのように反映するのかといった問題があります。

 自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」が「年収」にあたりますが、これに実際に支出されていない費用を「課税される所得金額」に加算する必要があります。具体的には、以下の項目を加算します。

  • 雑損控除
  • 寡婦・寡夫控除
  • 勤労学生・障害者控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除
  • 青色申告特別控除額
  • 医療費控除
  • 生命保険料控除
  • 損害保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 寄付金控除
  • 専従者給与額の合計額(現実に支払いが行われていない場合のみ)

 給与所得と自営による収入の両方がある場合は、自営収入を給与収入に換算するなどして計算をすることになります。

 なお、児童扶養手当や児童手当は子のための社会保障給付なので、権利者の年収に含める必要はないとされています。

② 基礎収入割合の計算

 簡単に説明をすると、「総収入」から必要経費を引き、生活費に充てることのできる金額を計算することになります。「総収入」から引くことができるのは以下の項目とされていますが、通常は、権利者・義務者が実際に支出している金額を計算するわけではなく、家計調査などの資料を基に、一般的な金額を算出することになっています。

㋐ 公租公課:所得税、住民税、健康保険料、厚生年金保険料など
㋑ 職業費:通勤費、転勤に伴う転居費用、単身赴任の場合の旅費、業務に関係する研修費・資格取得費・書籍費・制服代・交際費など
㋒ 特別経費:住居関係費・保険医療費・保険掛金

 その方の「総収入」における上記㋐㋑㋒の費用の割合を合計すると、統計上、その方の収入が高くほど高くなります(公租公課が高額になるため。)。そのため、高額所得者の方が、生活費に充てることのできる割合は低くなります。標準算定表では、以下のように収入のうちの生活費に充てることのできる金額の割合(これを「基礎収入割合」と呼んでいます。)を定めています。この数値は、統計から計算されたものです。

給与所得者の場合
給与額(万円)
割合(%)
0~7554
~10050
~12546
~17544
~27543
~52542
~72541
~132540
~147539
~200038
自営業者の場合
自営の所得(万円)
割合(%)
0~6661
~8260
~9859
~25658
~34957
~39256
~49655
~56354
~78453
~94252
~104651
~117950
~148249
~156748

 権利者と義務者の「基礎収入」は、それぞれの「総収入」に「総収入に応じた基礎収入割合」を掛けることで算出します。

子の生活費(最低生活費)の計算

 次に、基礎収入のうち、子に充てられるべき生活費の割合を計算します。

 この計算は、親の生活費を「100」とした場合に、子に充てられるべき生活費の割合を、統計から算出します。統計には、子の生活費と公立学校の教育費が含まれています。逆に言うと私立学校の学費は含まれていないことになります。そのため、子が私立学校に通学している場合は、養育費の額を修正する必要が生じることがあります。

 統計上算出された生活費指数は、以下のとおりとなっています。

権利者:100
義務者:100
15歳未満(0~14歳)の子:62
15歳以上の子:85

子が複数いる場合は、子の人数分、生活費指数を足します。例えば、10歳の子と16歳の子がいる場合、子2人分の生活費指数は147(62+85)となります。

 この生活費指数を用いて、以下の式により、子に充てられるべき生活費の割合を計算します。

「義務者」の基礎収入×子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数)

 以上の計算式により、子の生活費の額(年額)を算出します。

義務者の養育費分担額の計算

 上記の式で計算された「子の生活費(最低生活費)」を権利者と義務者の間でどのように分配するか、計算をします。計算の方法は以下のとおりです。

子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

 この式によって算出された額が、「義務者」の年間の養育費の支払額になります。

 この数字を12で割ると、月額の養育費の支払額になります。

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