勤務成績が悪い/能力が不足していることを理由とする解雇は有効なのでしょうか?
勤務成績が悪いことや能力が不足していることが解雇の理由とされることがあります。これらの理由による解雇は有効なのでしょうか。どのような要素があれば有効になるのでしょうか。ご説明します。
法律上の解雇の規制
まず、労働契約法は、以下のように、使用者による解雇に制限を設けています。
労働契約法16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
以上の条文により、勤務成績の不良や能力不足を理由とする解雇の場合も「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当であること」が求められることになります。
なお、期間の定めのある労働契約を結んでいる場合は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間中に労働者を解雇できないと定められており(労働契約法17条1項)、より厳しい基準で審査されることになります。
それでは、勤務成績の不良や能力不足を理由とする解雇の場合、具体的にどのような事情が考慮されるのでしょうか。一般に、裁判所は、以下の要素を踏まえて検討すると考えられています。
- その労働者に求められている能力はどのようなものなのか
- 勤務成績の不良や能力の不足の程度はどの程度なのか
- 教育や指導などにより改善する可能性はないのか
以下、詳しくご説明します。
その労働者に求められている能力はどのようなものなのか
まず、最初に、契約上、その労働者に求められている成績や能力がどの程度のものであるか、確定させる必要があります。採用の経緯や労働契約の内容から求められる能力が判断されることになります。具体的には、以下のような点が考慮されると考えられています。
- 新卒採用か、中途採用か(一般に、中途採用の方が求められる能力は高い)
- 採用の際に特定の能力を有することが条件とされていたか
- 採用試験で能力の確認が行われていたか
- 職種を限定した採用が行われていたか
- どのような役職についているか
- 給料などの条件はどのようになっているか など
勤務成績の不良や能力の不足の程度はどの程度なのか
次に、成績の不良や能力の不足の程度が問題となります。この点を考えるにあたり注意をしなければならないことは、使用者側の査定が低いイコール能力の不足とはならないということです。人事評価が低いことで、直ちに能力の不足が認められるわけではありません。使用者側は、客観的な資料に基づき、能力の不足を証明しなければなりません。「相対評価で低い評価を得ていた」というだけでは解雇は有効にならないと考えられています。
教育や指導などにより改善する可能性はないのか
さらに、客観的に能力不足や成績の不良が認められたとしても、直ちに解雇が有効となるわけではありません。裁判例では、教育や指導によっても能力不足が解消される可能性がないことや配転や降格などでは対応することができないなど、解雇以外の手段がないような状況にあることを求めるものもあります。労働者側が能力不足の改善の努力をしていたかなども考慮の対象となります。
以上のように、能力不足や成績の不良による解雇は簡単に認められるわけではありません。客観的な能力不足が認められ、かつ、改善が不可能な状況であると認められて、はじめて解雇は有効となります。どのような事案で解雇が有効となるかは事案によって異なります。会社から解雇を言い渡された場合には、その場で即答せず、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。
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