「家庭裁判所調査官」が手続きに参加をしました。どのような調査が行われるのでしょうか?

 離婚の調停・訴訟において、親権や面会交流について争いがある場合、子の監護者指定・子の引き渡し、面会交流などの調停・審判を申し立てた場合、通常、裁判官、調停委員の他に、「家庭裁判所調査官」が調停・審判・訴訟に関与をします。この「家庭裁判所調査官」は、子どものことなどについて、専門的な調査を行う、家庭裁判所の職員です。

 ここでは、この「家庭裁判所調査官」が、親権の指定・面会交流・子の引き渡しなどの手続においてどのような役割を果たしているのか、どのような調査をするのかなどについて、ご説明します。

親権者について争いがある場合

 離婚調停や離婚訴訟において親権者を父母のどちらにするか争いがある場合には、通常、家庭裁判所の調査官による調査が行われます。

 離婚調停の場合、調査官が調査を行い、親権者についてどのように考えるべきか、方向性を示し、父母の合意を促します。離婚調停の場合、調査官の一定の見解は示されますが、これを受け入れることは義務ではありません。ただし、調停が不成立になった後、離婚の訴訟になると、調停の際に作成された調査報告書の内容が訴訟にも影響することになりますので、調停の段階から、調査官の調査に適切に対応することが重要です。

 離婚訴訟の場合、裁判官が、調査官の調査をもとに、父母のどちらを親権者とするか、判断します。最終的な判断は裁判官が行いますが、ほとんどのケースでは、家庭裁判所調査官の意見が、そのまま判決に反映されます。「親権は調査官の意見で決まる」といっても差し支えないです。

 以上のとおり、親権のついて争いがある事案では、家庭裁判所調査官の調査にどのように対応するかが最も重要なポイントになります。

家庭裁判所調査官による調査の内容

 家庭裁判所調査官が何を調査するかは、裁判官の命令によって決まります。一般的には、以下のような内容を調査するよう、裁判官から命令されることが通常です。

以下、それぞれの調査について説明します。

① 子の監護状況の調査

 現在、子がどこで、どのような生活をしているのかを調査するものです。調査の方法は事案によって様々ですが、主に、以下のような調査が行われます。

  • 子を監護している親に「現在の監護状況に関する報告書」の提出を求める。
  • 母子手帳や幼稚園・保育園の連絡帳など、子の監護状況がわかる資料の提出を求める。
  • 現在、子を監護している親から聞き取り調査を行う。
  • 現在、子が住んでいる家の家庭訪問を行う。
  • 事案によって、幼稚園・保育園・小学校などの担当者から子の生活状況の聞き取りを行う。

また、現在、子を監護していない親についても、以下のような調査を行います。

  • 子と同居をしていた期間において、子の監護にどのようにかかわっていたのか、報告を求める(書面・面談など。資料があれば、資料の提出を求める。)。
  • 子を引き取った場合にどのような監護を行う予定なのか、報告を求める(書面・面談など)。

さらに、父母の両方について、祖父母など、子の監護を手伝う方(「監護補助者」と呼ばれます。)がいらっしゃる場合には、

  • 監護補助者がいるか、どのような立場の人か、報告を求める。
  • 監護補助者が、どの程度、子の監護に関与できるのか、報告を求める。
  • (事案に応じ)監護補助者と面談を行う。
  • (事案に応じ)家庭訪問をするなどして、子の監護の準備状況を確認する。

などの調査を実施します。

 以上の調査を踏まえ、子の監護状況について、現在の監護状況に問題はあるか、将来、子を誰が、どのように監護すべきかなどについて、調査官の意見が示されます。

② 子の意向の調査

家事事件手続法65条家事審判の手続における子の意思の把握等】
 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。中略)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

人事訴訟法32条(附帯処分についての裁判等)
 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は厚生年金保険法(中略)第78条の2第2項の規定による処分(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。
 前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。
 前項の規定は、裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において親権者の指定についての裁判をする場合について準用する。
 裁判所は、第1項の子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分についての裁判又は前項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、子が15歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない。

 家事事件手続法65条により、裁判所は、子が自分自身の意向を示すことのできる年齢になっている場合には、親権の決定などについて、子の意見を聞くことになります。そして、上記人事訴訟法32条4項や家事事件手続法の各条文により、子に影響のある判決や審判をする場合には、15歳以上の子については、意見を聞かなければならないこととなっています。この「子の意向調査」は裁判官が直接行うこともありますが、多くの場合、裁判官の命令により、家庭裁判所調査官が調査を担当することになります。

 子の意向の調査は、家庭裁判所で行われる場合と、家庭裁判所調査官が子の自宅を訪問して行う場合があります。家庭裁判所で意向調査を行う場合も、子が緊張しないように、家庭裁判所に児童館が設置されている場合はそこで面談を実施するなどの配慮が行われます。

 子からの聞き取りの内容は事案によって様々ですが、いきなり「父親がいいか母親がいいか」と聞くようなことはせず、現在の生活状況や学校での様子などを聞き取る中で、子の意向を調査することが多いかと思います。通常、1人1人の子から個別に聞き取りを行いますが、事案によっては、兄弟が同席して聞き取ることもあります。子の聞き取りには、親や弁護士などの同席は認められないことが通常です。

③ 親権者の適格性の調査

 いずれかの親から、他方の親の親権者としての適格性について問題があるとの主張が出された場合や、記録・資料から親権者としての適格性に問題がありうると判断された場合などに、それぞれの親の親権者としての適格性が調査されることがあります。

 調査の方法は、子の監護状況の調査でお話ししたものと似ていますが、それぞれの親から出された主張などをもとにして、その裏付けを調査していくことが多いかと思います。必要に応じ、両親や監護補助者から聞き取りを行ったり、資料の提出を求める他、幼稚園・保育園・小学校など、第三者からの情報を収集することもあります。第三者からの情報提供は、当事者(親)から資料を提出することもありますが、家庭裁判所調査官が、独自に調査を行うこともあります。

④ 調査報告書の作成

 家庭裁判所調査官は、以上のような調査を行ったうえで、その調査の結果を「調査報告書」にまとめます。また、調査報告書には、「家庭裁判所調査官の意見」が記載されます。この「家庭裁判所調査官の意見」に記載された内容は、裁判官の判断に大きな影響を与えます。

 この「調査報告書」は裁判官に宛てて書かれたもので、当事者に配られるものではありません。当事者は、裁判官の許可を得て、調査報告書を閲覧したり謄写したりすることができます。

面会交流について争いがある場合

 離婚の調停や訴訟で面会交流の実施の可否や面会交流の方法などについて争いがある場合、面会交流の調停・審判が起こされた場合も、裁判官の命令により、家庭裁判所調査官が調停・審判・訴訟に加わります。家庭裁判所調査官は、主に子の意向についての調査を行うことになります。

 面会交流の調査の特徴的な手続きとして、家庭裁判所などで「試行的面会交流」が行われることがあります。これは、家庭裁判所の会議室や児童館などで子と非監護親(子と別れて生活をしている親)に会ってもらい、このときの子の様子を、家庭裁判所調査官が調査をするというものです。家庭裁判所調査官が直接観察をするケースと、モニター越しに観察するケースがあります。このときの面会交流の状況や子の反応が記録され、面会交流を実施すべきか、どのような方法で面会交流を実施すべきかなどを判断するための材料とされます。

子の監護者指定・子の引き渡し・親権者変更の調停・審判・審判前の保全処分など

 両親が別居中にどちらの親の監護の下で子が生活すべきかが争いになる事案、別居する親の間で子の引き渡しについて争いがある事案、親権者の変更が問題になる事案などでも、裁判官の命令により、家庭裁判所調査官が調停・審判などの手続に加わります。

 実施をする調査の内容は、親権者を定める場合と似ています。家庭裁判所調査官は、子の監護状況の調査・子の意向の調査・親の親権者としての適性の調査などを行い、子の監護者をどうすべきか、子の引き渡しを認めるべきか、親権者を変更すべきかなどについて、調査結果を報告し、意見を述べます。

 このような手続きでは、(元)夫婦間で合意が整わない場合、最終的には裁判官が「審判」によって結論を決めますが、家庭裁判所調査官の意見は、裁判官の「審判」に大きな影響を与えます。

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