成年後見制度の利用を止めたり、後見人等を変更してもらったりすることはできるのでしょうか?

 成年後見についてのご相談をお受けしていると、しばしば、以下のようなご相談を受けることがあります。

  • 成年後見等の申立てをされた方から「候補者と異なる方が後見人等に選任されそうなので後見等の申立てを取り止めたい」というご相談
  • 成年後見制度の利用開始後に、ご本人やご家族から「後見人等を外したい」というご相談
  • 成年後見制度の利用開始後に、ご本人やご家族から「後見人等を変更してほしい」というご相談(特に専門職の後見人等が選任されているケース)

 このようなご相談に対し、ご相談者のご要望をかなえる方法はあるのでしょうか。ここでは、後見人等の交代・利用停止などについて、どのような制度になっているのか、どのような運用になっているのか、お伝えします。

Q1 「候補者と異なる人が後見人等に選任されそうなので申立てを取り止める」ということはできるのでしょうか?

 結論からいうと、家庭裁判所への申立書の提出後は申立ての取り止めが認められる可能性は相当低いと考えられます。その理由は、以下の家事事件手続法の規定です。

家事事件手続法121条(申立ての取下げの制限)

 次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。
 後見開始の申立て
 民法第843条第2項の規定による成年後見人の選任の申立て
 民法第845条の規定により選任の請求をしなければならない者による同法第843条第3項の規定による成年後見人の選任の申立て

 以上の規定により、家庭裁判所に成年後見開始の申立ての申立書を提出した後は、家庭裁判所の許可がある場合を除き、申立てを取り止めることはできません。申立人の都合による取り下げを防止し、ご本人の権利を擁護するため、このような規定がなされています。後見類型の場合のみではなく、保佐・補助の類型でも同じ扱いになっています(家事事件手続法133条、142条)。申立書を提出した後は、成年後見制度の利用がご本人の利益にならないなどの特別の事情がある場合を除き、成年後見制度の利用を取り止めることはできません。

 なお、前提として、誰を後見人等に選任するかは家庭裁判所が決めることとなります「親族の方を候補者として申し立てたが、裁判所が弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職を選んだ」というケースは多くあります。このような場合に「成年後見等の申立てを取り止めたい」ということはできませんので、注意が必要です。この点は、申立代理人の腕で何とかなるという問題ではありません。そして、「誰を後見人等に選任するか」という家庭裁判所の判断に対しては不服申立て(即時抗告)をすることもできません。家庭裁判所の決定が絶対ということになります。特に親族の方を候補者として成年後見等の申立てを行う場合、「家庭裁判所が候補者の方を後見人に選ぶとは限らない」ということを十分にご理解の上、申立てをお願いすることになります。

 また、家庭裁判所が、「候補者の方を後見人等に選任するが、専門職の後見監督人を選任する」というケースもあります。この場合も「後見監督人が選ばれるのであれば成年後見等の申立てを取り止めたい」ということはできないので注意が必要です。なお、後見監督人が選任された場合、後見監督人の報酬が発生します。

 このことは、成年後見申立てを行う前に、十分に理解をしておく必要があります。後から何とかしたいと考えても対応する方法はありません。

Q2 選任された後見人等を変更してもらうことはできるのでしょうか?

 後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所の許可がなければ変更をすることはできません。後見等監督人も、家庭裁判所の許可がなければ変更をすることはできません。

 後見人等の側から交代を申し出るケース、ご本人(被後見人等)やその親族の側から変更を求めるケースのどちらもあり得ますが、単に「相性が悪い」というだけでは、変更は認められないのが通常です。特にご本人やその親族の方からの求めで後見人等の変更が認められるケースは少ない印象です。なお、横領が発覚したようなケースでは、申立てを待たず、裁判所が職権で後見人等を解任することもあります。

 他方、後見人等の側から変更を申し出るケースとしては、後見人等の転居・高齢・体調不良等による業務困難の他、例えば法律問題が解決したことによって法律専門家である弁護士から福祉関係者への変更を求めるケースがあります。最近、後者のように、後見人等が果たすべき役割に応じて後見人等の変更(あるいは追加、削減等)に柔軟に対応する方針がとられるようになってきています。

Q3 成年後見制度の利用を取り止めることはできるのでしょうか?

 後見人・保佐人・補助人は、家庭裁判所の審判がなければ外すことはできません。

 そして、後見人等を外す申立ては、後見人等の変更の場面とは違い、後見人等を外す場合には「後見等の開始の要件がなくなったこと」=「事理弁識能力が回復したこと」を裁判所に認めてもらわなければならないため、非常にハードルが高くなっています。認知症や知的障がいの場合、そもそも事理弁識能力を回復することは稀なので、後見人等を外すことが認められるケースはかなり少ないといえます。「後見人等を付けたら一生外すことはできない」と言われることがあり、これは不正確ではあるのですが、外れるケースがほとんどないことは事実です。ある契約や手続等のために、スポット的に後見人等を付す制度についての議論もありますが、現時点では制度化されていません。

Q
申立てのきっかけとなったこと(遺産分割・不動産の売却など)が終了し、後見人(・保佐人・補助人)の仕事はなくなりました。それでも後見人等を外すことはできないのでしょうか?
A

よくある質問ですが、申立てのきっかけとなった課題が解決したとしても、後見・保佐・補助は終了しません。「後見等の開始の要件がなくなった」という事情が発生しない限り、後見・保佐・補助は、ご本人が亡くなられるまで続きます。

 なお、課題が解決したことを理由として、後見人等が交代することはあり得ます。最近は、こちらについては、以前に比べると、柔軟に認められるようになってきたといわれています。

 なお、保佐・補助の場合、事情の変更により「代理権」や「同意権」が不要となった場合に、これらの権利の付与が取り消される可能性はあります。権利の付与を取り消すかは、個別の事案に応じた判断になります。権利の取消しは、ご本人の意向のみで決定されるわけではなく、様々な事情を考慮して判断されることになります。ご本人が権利の取消しを強く望んだからといって、常に取消しが認められるわけではありませんので、注意が必要です。

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