婚姻関係破綻後の不貞行為は損害賠償責任を負うか

1. 婚姻関係破綻後の不貞行為と損害賠償責任の原則
配偶者が婚姻関係にある相手以外の第三者と肉体関係を持った場合、不貞行為として損害賠償の対象となるのが一般的です。
しかし、婚姻関係が既に破綻している状態で不貞行為が行われた場合、法律上の扱いは異なります。
原則として、婚姻関係が破綻した後の不貞行為については、不法行為責任(民法第709条)を問うことはできないとされています。
2. 最高裁判例が示す「原則として責任を負わない」理由
最高裁判所第三小法廷平成8年3月26日判決(民集50巻4号993頁)では、以下のように判示されています。
このように、婚姻関係が既に破綻していた場合には、夫婦間における「婚姻共同生活の平和の維持」という法的利益が消滅しており、不貞行為はその利益を侵害しないため、不法行為には該当しないとされています。
3. 「特段の事情」がある場合の例外
ただし、上記最高裁判例でも「特段の事情」がある場合には、不法行為責任が認められる可能性が示唆されています。
この「特段の事情」とは、婚姻破綻後の不貞行為であっても、信義則上、第三者に不法行為責任を免れさせるべきではないような事情がある場合を指します。
4. 近時の裁判例
東京地方裁判所令和7年1月30日判決(判例時報2625号20頁)では、次のような事案について、「特段の事情」があるとして不法行為責任を認めました。
• 被告が原告の夫と性交類似行為を行ったことが原因で、原告と夫の婚姻関係が破綻した。 • その後、婚姻関係が破綻した直後に、被告が原告の夫と性行為を行った。
裁判所は以下のように判断しました。
この判決では、被告に対して165万円の損害賠償が命じられました。
5. 「特段の事情」がある場合の判断ポイント
婚姻関係が破綻した後の不貞行為であっても、例外的に損害賠償責任を負うケースが存在します。
• 婚姻関係の破綻自体に不貞行為が寄与している場合 • 婚姻関係が破綻した直後であり、不貞行為が継続的に行われた場合 • 不貞行為により婚姻当事者に対して著しい精神的苦痛を与えた場合
判例は、婚姻破綻後であってもその経緯や行為の内容を重視し、個別具体的な事情を踏まえて責任の有無を判断しています。
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