遠方の裁判所で調停や訴訟をしなければならない場合も、毎回、裁判所に行かなければならないのでしょうか?
家庭裁判所の手続を利用する場合、どこの裁判所を利用しなければならないかは、法律で決められています。別居をし、遠方に住んでいる場合などは、離婚調停などの申立てをする裁判所が遠方になってしまう場合があります。
このように遠方の裁判所で手続きをすることになった場合、調停などの度に裁判所に行くことは大変なので、事情によっては、裁判所に行くことなく、手続きを進めることができる場合もあります。ここでは、どのような場合に、どのような制度を利用できるか、解説します。
手続きをする裁判所はどのようにして決まるのか?
まず、最初に、家庭裁判所の管轄について説明をします。
家事調停・家事審判・人事訴訟は、いずれも家庭裁判所で取り扱われます。地方裁判所や簡易裁判所で取り扱われることはありません。他方、慰謝料請求訴訟は、原則として、地方裁判所・簡易裁判所で取り扱われます。
家庭裁判所は、各都道府県に1か所(北海道のみ4か所)、県庁所在地に所在するほか、地域によって支部や出張所が設置されていることもあります。例えば東京都の場合、東京家庭裁判所、東京家庭裁判所立川支部、東京家庭裁判所八丈島出張所・伊豆大島出張所が設置されており、大まかにいうと、それぞれ、東京都心、多摩地区、島しょ部を管轄しています。細かい管轄は、裁判所ウェブサイトに記載されています。「〇〇市 家庭裁判所 管轄」等と検索をしていただければ、裁判所のウェブサイトが表示されるはずです。
これらの家庭裁判所のうち、実際にどこに申し立てるのかは、当事者の住所によって決まることになります。なお、より正確にいうと、「住所」とは「今、現在、実際に住んでいる場所」を意味し、住民票上の住所と異なることもありえます。誰の住所を基準とするかは、調停、審判、訴訟のそれぞれで、微妙に違いがありますので、以下、ご説明をします。
調停(離婚・養育費など)の管轄は、原則として「相手方住所地」となります。例えば、調停を申し立てたいAさん(申立人)が東京都豊島区、調停の相手方となるBさん(相手方)が札幌市に住んでいる場合、調停の申立先は、札幌家庭裁判所ということになります。
離婚訴訟の管轄は、「原告又は被告の住所地」となります。先ほどの例で説明すると、訴訟を起こしたいAさん(原告)が東京都豊島区、訴訟の相手方となるBさん(被告)が札幌市に住んでいる場合、訴訟の申立先は、東京家庭裁判所と札幌家庭裁判所の、どちらでもよいということになります。
審判の管轄は、どのような内容の審判を申し立てるのかによって異なります。例えば、婚姻費用(別居中の生活費)の支払いを求めるものは、「申立人か相手方の住所地」に申立てを行うこととされています。また、子の面会交流に関する申し立ては「子の住所地」に申立てを行うこととされています。それぞれの手続で管轄がどのようになっているのかは、裁判所のウェブサイトでお調べいただくか、各家庭裁判所の窓口で行われている「手続案内」で教えてもらうことができます。
また、上記の例外として、当事者が合意で定めた家庭裁判所を管轄とすることができることもあります。さらに、特別な事情があるときは、本来の管轄とは異なる家庭裁判所で調停などが行われることもあります。
なお、通常は、管轄外の裁判所に申立てを行うと、管轄のある家庭裁判所に移送されます。ただし、事情により移送されない場合もあります。事件を移送するかどうかは、家庭裁判所が判断をします。
相手方が配偶者又は元配偶者であれば、ご自身の戸籍を取得することにより、相手方の「本籍地」を知ることができます。この「本籍地」の市区町村は、今、住民票の住所がどこにあるのかを把握しています。この「住民票の住所がどこにあるのか」を記録しているものを「戸籍の附票」と呼びます。相手方の本籍地の市区町村に対し、この「戸籍の附票」のコピーを請求することで、相手方の現在の住民票上の住所地を調べることができます。
また、弁護士にご依頼いただいた場合には、弁護士会照会などにより、相手方の居住地を調べることができる場合もあります。詳しくは弁護士にご相談ください。
遠方の裁判所が管轄裁判所になった場合の対応方法
家庭裁判所の調停に決め方のルールにより、特に調停について、「相手方住所地」に申立てをする必要があるため、別居中の場合、相手方が遠方にいるということがありえます。「東京都23区内⇒立川」程度であればそれほど移動の負担は大きくないかもしれませんが、「東京⇒札幌」、「東京⇒那覇」など、移動の負担が非常に大きくなるケースもあり得ます。さらに、家庭裁判所には支部・出張所があるため、事案によっては宮古島(那覇家庭裁判所平良支部)・石垣島(那覇家庭裁判所石垣支部)・奄美大島(鹿児島家庭裁判所名瀬支部)などの離島の裁判所が管轄裁判所になることもあり得ます。このように遠方の家庭裁判所が管轄となる場合に、月1回程度の調停期日に毎回出席しなければならないとすると、非常に大きな負担になります。
① 電話会議の利用
家庭裁判所は、このように遠方に居住しているなどして出席困難なケースへの対応として、電話会議を利用することがあります。特に弁護士の代理人がいるケースでは、弁護士事務所の電話と裁判所の電話とつなぎ、ご本人は弁護士事務所の電話で調停に出席するということが、よく行われています。このような制度を利用することで、東京の弁護士事務所から札幌や那覇の家庭裁判所の調停に出席することができます。また、家庭裁判所が認めれば、弁護士の代理人を選任していない場合であっても、電話による調停出席を認めることがあり得ます。一度、家庭裁判所にお問い合わせ下さい。
一方が遠方に居住している事案では、電話での調停を重ね、調停成立の直前まで調整を行います。そして、法律上、調停離婚が成立する際には、現地で出席することが必要とされていますので、調停離婚が成立する最後の1回の調停だけ、現地で出席することになります。
ただし、これにも例外があり、「調停に代わる審判」という制度を利用することにより、一度も現地で出席することなく離婚を成立させる方法が採用されることもあります。この場合、「審判離婚」となります。
② テレビ会議の利用
家庭裁判所の判断により、テレビ会議を利用できる場合があります。これは、最寄りの家庭裁判所に行き、そこからテレビ会議で遠方の家庭裁判所の調停に参加するというものです。このテレビ会議システムを利用する場合、申立てをした先の家庭裁判所と話し合っていただき、調整をすることになります。家庭裁判所側の機材の問題があるため、いつでも使うことができるものではありません。特に弁護士の代理人がついているケースでは、電話会議の方が多く利用されているように思われます。
③ 弁護士が代理人として出席する
弁護士を代理人に選んでいる場合は、ご本人の代わりに弁護士が調停に出席することも可能です。
調停手続きでは、弁護士を代理人に選んでいる場合、ご本人と弁護士が、一緒に出席することが一般的です。調停委員の方にご本人の事情を直接伝えるため、ご本人も出席いただいた方がよい場合が多いと思います。もちろん、調停中は、弁護士が、ご本人の横に座り、サポートをさせて頂きます。
しかしながら、ご本人が遠方で出席が難しい場合やご本人が病気や妊娠中などで出席が難しい場合、家庭裁判所で相手方と顔を合わせることでトラブルが起こる可能性がある場合、調停で争いになっている事項が法律の解釈についてなどでご本人の出席が不要と思われる事情がある場合などは、弁護士のみが調停に出席し、ご本人は、いつでも連絡を受けることができる場所で待機をしていただく、ということも可能です。
④ その他
その他、弁護士同士のネットワークを活かし、遠方の弁護士と共同で事件をお受けすることで遠方の事件に対応することもあります。弁護士にご相談を頂いた場合、ご相談者・ご依頼者の希望をお伺いしつつ、対応方法を考えさせていただきます。
このように、遠方の裁判所が管轄裁判所となるケースでも、様々な方法で対応をさせて頂くことが可能です。ご自身で対応されるのは難しいと思いますので、まずは弁護士にご相談いただければと思います。
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