不動産の財産分与をする際、気を付けなければならない税金の問題はあるのでしょうか?
財産分与は、原則として「非課税」とされています。通常、贈与税が発生することはありません。これは、財産分与は、相手方から贈与を受けるものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられているからです。
しかしながら、不動産の財産分与については税金の問題が発生することがあります。不動産を財産分与をするにあたり、税金について、どのような点に注意をしなければならないか、ご説明します。
贈与税が問題となる場合
財産分与は、原則として非課税です。通常は、贈与税は発生しません。しかしながら、以下のような場合には贈与税が課されることになります。
- 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合 → 多すぎる部分について、贈与税が課されます。
- 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合 → 離婚に伴って受け取った財産の全てに贈与税が課されます。
贈与税の問題は、不動産以外の財産を分与した場合にも発生することがあります。
なお、不動産を財産分与する場合、住宅ローンの都合などにより、所有権の移転は離婚時に行うが、名義の変更は住宅ローンの完済時とするなど、所有権移転のタイミングと名義変更のタイミングが異なることがあり得ます。この場合、名義変更が「贈与」であると認定される場合、贈与税の問題が発生してしまう可能性があります。このような問題が発生することを避けるため、不動産の登記を移転する際に「離婚の時点での財産分与に基づく登記の移転である」ことを明らかにする必要があります。協議離婚書を書面で作成するなどして、これを証明できるようにしておくことが重要です。
不動産取得税
通常、不動産の所有権を取得すると、不動産を取得した方に「不動産取得税」が課されます。税率は、土地と居住用の家屋は固定資産評価額の3パーセント、居住用ではない家屋は固定資産評価額の4パーセントです。ただし、令和6年3月31日までに宅地を取得した場合については、固定資産評価額の2分の1の額を基準として計算します。
この不動産取得税は、原則として、不動産の取得が有償であるか無償であるかを問わず、課されることになります。ただし、財産分与により不動産を取得する場合、以下の要件を満たすときには不動産取得税は発生しません。
- 夫婦の共有であると評価される不動産を分与すること(名義が共有である必要はなく、婚姻期間中に購入をしたなど、法律上、夫婦の共有財産と評価できる事情があればよい)
- 不動産の譲渡が、夫婦の共有財産の清算のために行われたものであること
一方で、「慰謝料を支払う代わりに不動産を譲渡した場合」や「離婚後の生活保障のために不動産を渡した場合」などは不動産取得税が課されることになります。不動産取得税は発生しないのは「夫婦の財産の清算のために不動産の名義を移転した場合」に限られます。
不動産の譲渡所得税
不動産の譲渡所得税は、不動産を譲渡した側(財産の分与をした側)に課される税金です。不動産を譲渡することにより、所得を得た場合に、その所得に対して課されます。譲渡所得税は、財産分与により不動産を譲渡した場合にも発生することがありますので、注意が必要です。財産分与の場合、売却などの場合と異なり現金などの収入がないため、「利益が発生していない」と思われるかもしれませんが、そのように考えるのではなく、財産分与においても譲渡所得税の問題は発生します(過去に裁判で争われたこともありましたが、最高裁判所は、譲渡所得税が発生するとの判断をしています。)。なお、不動産の譲渡所得税は給与所得などと合計せず、分離をして計算する「分離課税制度」が採用されています。
譲渡所得税の金額は、以下の計算式によって計算されます。
課税譲渡所得金額 = 収入金額 -(取得費(不動産の購入代金・建築代金・購入手数料など)+譲渡費用(仲介手数料・印紙代・立退料など))- 特別控除額
① 収入金額
収入金額は、通常は、土地や建物を打ったことによって飼い主から受け取る金銭の額によって算出します。しかしながら、財産分与の場合は、財産分与を行った時点の土地や建物の時価が収入金額として認定されます。財産分与により、分与を行った側には、金銭的な利益は発生しないことが通常ですが、譲渡所得税の計算上は利益が発生しているとみなされますので、注意が必要です。
② 特別控除額
譲渡所得税を計算するにあたり、一定の要件を満たす場合には控除を受けることができるようになっています。この中で、特に重要なのが、マイホームを譲渡した場合に受けることができる、3000万円の控除です。しかしながら、この控除は、「売り手と買い手が、親子や夫婦(内縁関係を含む。)などの特別な関係にある場合」には適用されません。つまり、財産分与の場面では、マイホームを譲渡したとしても、3000万円の控除を使うことはできないということになっています。
この控除の規定により、取得時に比べて自宅の価格が高くなっている可能性がある場合には、譲渡所得税について3000万円の控除を受けることができるようにするため、離婚を先行させ、離婚が成立した後に自宅の財産分与を行うという方法をとることも考えられます。
③ 税率
税率は、譲渡をする不動産を所有していた期間によって異なります。譲渡をした年の1月1日現在で不動産の所有期間が5年を超える場合には「長期譲渡所得」となり、税率は課税所得金額の15%となります。一方で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は課税所得金額の30%となります。
なお、平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として、さらに2.1%の上乗せがあります。
以上のとおり、不動産を取得した時点の不動産の価値と比べて財産分与をした時点の不動産の価値が値上がりしている場合、財産分与により譲渡所得税が課されることになります。不動産の財産分与を行うにあたっては、この譲渡所得税の問題が発生するのか、見極めることが重要になります。特に、不動産を譲渡する側にとっては、予想外の出費とならないよう、注意が必要です。
登録免許税
法務局において不動産の名義を変更する際、登録免許税を収める必要があります。通常は、財産分与を受けた側が名義変更を行う際に支払います。税率は、固定資産評価額の2%です。
なお、不動産の名義の変更の手続について、司法書士に依頼をした場合には、司法書士の費用も必要となります。
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