遺産分割の基礎知識

 遺産は、遺言がある場合は、遺言にしたがって分割をすることになります。
 それでは、遺言がない場合、どのように遺産を分割すればよいのでしょうか。
 遺産の分割方法は原則として自由です。しかし、すべて自由にすると、声の大きい人が勝つという世界になりかねません。
 そこで、法律は、遺言がない場合の遺産分割の方法を定めています。このページでは、その内容を説明させていただきます。

目次

1 法定相続分
2 遺産の分け方のルールはあるのか
3 遺産分割の対象
4 遺産分割に期限はあるのか

法定相続分

 遺言がない場合の相続について、民法は、以下の図のとおりに規定をしています(民法890条)。

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 同順位の法定相続人が複数いる場合は、その人数で均等に分けることとなります(例えば、配偶者と子2人がいる場合には、配偶者が2分の1、子2人はそれぞれ4分の1ずつとなります。)。ただし、父母のどちらか一方の違う兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹)の相続分は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。

 なお、相続が発生する時点で既に子は亡くなっているが子の子(孫)がいる場合、孫が相続人となります(「代襲相続」といいます。この場合、直系尊属や兄弟姉妹は相続人にはなりません。)。この場合の孫の相続分は、子の相続分と同じです。孫が亡くなっているがひ孫がいるという場合にも代襲相続は発生します。直系尊属についても、例えば父親が亡くなっている場合で祖父母(あるいはその一方)が存命であれば、存命の祖父母が相続人となります(この場合、兄弟姉妹は相続人にはなりません。なお、この場合は「代襲相続」とはいいません。)。兄弟姉妹が亡くなっている場合も、おい・めいが代襲相続します。ただし、兄弟姉妹については、おい・めいの子には代襲相続しません。

遺産の分け方のルールはあるのか

 遺産の分割方法は、原則、自由です。民法の規定は、以下のようになっています。

民法906条(遺産の分割の基準)
 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

相続人全員が(真意で)合意をするのであれば、財産を自由の分割することができます。法定相続分にしたがって分けなければならないということはありません。土地・建物は長男Aさん、預貯金は長女Bさん、株式は次男Cさんという分け方も可能であり、全員が合意をしているのであれば、Aさん、Bさん、Cさんの間で受け取る遺産の価値が不平等になったとしても問題はありません。また、例えば土地をAさんとBさんで半分ずつ共有するといった分け方も可能です。また、一部のみを先に分割するということも可能です。

 しかしながら、完全に自由にしてしまうと、声の大きい相続人の独断で遺産の分割が行われることとなってしまいます。相続人のみでの話し合いが困難な場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することができます。また、相続人の中に音信不通の方や行方不明の方がいらっしゃる場合も、家庭裁判所で状況に応じて必要な申立てをしなければなりません。詳しくは、以下の各リンク先をご覧ください。

 すでに遺産分割協議書や合意書を作成してしまっている場合、その協議書・合意書を無効とすることは(あり得ないわけではありませんが)難しくなります。分割の方法に納得がいかない場合には、協議書・合意書にサイン・押印をする前に専門家に相談することをお勧めします。

 なお、事案によっては、相続人などによる無償労働があり「寄与分」が発生しうるケースや反対に生前贈与などを受けている方がおり「特別受益」が発生するケースなど、単純に法定相続分で分けることが相当でないようなケースもあります。「寄与分」や「特別受益」の詳しい解説は、以下のリンク先をご覧ください。

  • 遺産分割の方法に決まりはない。自由に分けてよい。
  • 遺産分割について合意が成立しない場合、家庭裁判所の調停を利用することができる。

遺産分割の対象

 被相続人(亡くなられた方)が亡くなった時点で所有していた一切の財産と負債が相続の対象となります(民法896条)。プラスの財産のみではなくマイナスの財産(負債)も相続の対象となることに注意が必要です。土地・建物・自動車・現金・預貯金などわかりやすい物のみではなく、債権(交通事故の損害賠償債権、第三者への貸付金を回収する権利など)も相続の対象となりますし、株式なども相続の対象となります。

 一方、以下のものは相続の対象とはなりません。

① 法律上、相続の対象とならないもの

民法896条(相続の一般的効力)
 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 条文や解釈により、相続財産に属さないとされている財産・権利(一身専属権)は相続の対象とはなりません。雇用契約上の地位(民法625条)、組合員の地位(民法679条)、扶養請求権、離婚時の財産分与請求権、生活保護の受給権などがその例です。

 また、民法上、相互の信頼関係を基礎にする契約は、当事者の死亡により終了するとされています。使用貸借契約(民法599条)、委任契約(民法653条)などがその例です。

② 祭祀承継財産

民法897条(祭祀に関する権利の承継)
 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 お墓・位牌・仏壇・遺骨などは、祭祀承継財産とされ、相続とは別に処理をされます。

 民法は、「系譜(家系図など)、祭具(位牌・仏壇など)及び墳墓(墓石・墓碑など)の所有権は、(中略)慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めており、原則として、遺産分割の対象とはなりません。遺骨・ご遺体も遺産分割の対象にはならないとされています。これらは「祖先の祭祀を主宰するべき者」が引き継ぐこととなります。

 「祖先の祭祀を主宰するべき者」を話し合いで決めることができない場合には家庭裁判所の調停を利用することができます。この手続きは遺産分割の調停とは別の手続となります。家庭裁判所は、お墓の掃除をしているのは誰か、仏壇・位牌を管理しているのは誰か、供養料を支払っているのは誰かなどの事情を考慮して判断をすることになります。

③ 死亡保険金

 受取人が指定されている死亡保険金などは、被相続人が死亡された時点で、指定された受取人に直接支払われるものとなりますので、相続の対象とはなりません。ただし、保険金を受け取った事実が後の遺産分割の際に考慮されることはあります。
 他方、受取人が被相続人本人となっている保険契約の保険金は相続財産となります。

  • 遺産分割の対象は、被相続人が亡くなった時点で所有していた一切の財産と負債。負債(借金)も相続の対象となるので注意が必要。
  • 一定の権利やお墓・遺骨など、法律や性質上、遺産分割の対象とならないものもある。

遺産分割に期限はあるのか

 遺産分割はいつでもできます。遺産分割をせずに放置をしておくことも、可能ではあります。

 ただし、遺産分割を未了のまま放置しておくと被相続人の預貯金を引き出すことができないなどの不利益が生じます。この点について、従来、金融機関は、遺産分割をしなければ一切の預金の払い戻しには応じないという態度を示すことが多くなっていました。2019年に民法が改正され、一部の預貯金については遺産分割を行うことなく、相続人のうちの1人が単独で払い戻しを受けることができるようになりました(民法909条の2)。しかしながら、預貯金全額の払い戻しを受けるためには、遺産分割を行わなければならないことは、現在も変更されてはいません。

 また、2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならなくなります。このような点からも、遺産分割未了の状態を放置し続けることは好ましいことではありません。

 なお、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。遺産分割が成立していなかったとしても相続税の申告を行い、納付をしなければなりません。遺産分割が終了しておらず、遺産を全く取得していない状態であったとしても法定相続分に応じて計算された相続税について納付義務が生じます。分割されていないということで相続税の申告期限が延びることはありません。この場合、遺産分割終了後に修正申告又は更生の請求を行うことにより、自分自身の遺産の取得分に応じた負担に変更をすることができます。

  • 遺産分割に期限はない。
  • ただし、相続税の申告には期限があり、また、今後、相続登記にも期限が設定される。

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