算定表で算出された婚姻費用・養育費の額を変更すべきなのはどのようなときですか?

 現在の裁判所の実務では、養育費・婚姻費用の決定は、「養育費・婚姻費用算定表」にしたがって行われています。裁判外の交渉でも、弁護士などの専門家が入った場合には、この「算定表」を参考に養育費・婚姻費用の額を決めていくことが一般的です。それでは、この「算定表」によって決まる額を修正すべき事案はないのでしょうか?

 一般的に、住宅ローンの支払がある場合、私立学校に通っているなど教育関係費の修正が必要な場合、高額な医療費がかかっている場合などは、算定表で算出されて額の修正が必要と考えられています。以下、それぞれについて説明をさせて頂きます。

 なお、以下の記事では、以下の用語を使用します。

  • 義務者=婚姻費用・養育費を支払う側の方
  • 権利者=婚姻費用・養育費を請求することができる(受け取る権利を持つ)方

住宅ローンの負担がある場合

 住宅ローンの残っている不動産について、住宅ローンを支払っている人と住宅に住んでいる人が異なる場合、婚姻費用や養育費の算定にあたり、住宅ローンの負担を考慮する必要があると考えられています。

① 権利者が住宅に居住しているが、義務者が住宅ローンを支払っている場合

 この場合、義務者が、自身の分と権利者の分の、2人分の住居関係費を支出しているため、修正が必要になるのではないかという問題が発生します。一方、住宅ローンの支払いは、資産形成の側面もあるため、権利者にとって何の利益もないということはならないとも考えられます。

 以上のように、住宅ローンの支払には、住居の確保と資産の形成という両方の面があるため、裁判所は、事案により、婚姻費用や養育費の修正をすべきと判断する場合と、修正は不要と判断する場合があります。裁判所は、別居に至った理由やそれぞれの収入などを考慮し、「公平の観点」から婚姻費用や養育費の額を修正する場合とそうでない場合があります。裁判所の判断は事案によって様々ですので、先例を見ながら検討をする必要があります。弁護士にご相談されることをお勧めします。

② 義務者が住宅に居住しているが、権利者が住宅ローンを支払っている場合

 この場合、義務者が住居関係費の支出を免れていることになるので、義務者の基礎収入を計算するにあたり、「特別経費」の中の「住居関係費」に相当する額は、義務者の収入から差し引かないという計算が必要になると考えられています。

教育関係費の修正が必要なケース

 「養育費・婚姻費用算定表」で計算される婚姻費用・養育費には、公立の中学校・高校の学費や必要経費が含まれています。一方で、私立学校の学費、学習塾や習い事の費用、大学の学費などは、「算定表」では考慮されていません・そこで、子が私立学校に通っている場合などは、婚姻費用や養育費の額を変更する必要があるか、問題となることがあります。

① 裁判所の考え方

 この点について、裁判所の一般的な考え方は、以下のとおりとされています。

  • 義務者が私立学校への進学や大学への進学などについて承諾している場合は、婚姻費用・養育費において私立学校の学費や大学の学費が考慮される。
  • 私立学校への進学や大学への進学などについて、義務者の承諾がない場合は、婚姻費用・養育費の修正は行わない(義務者は、公立学校の教育費を負担すればよい)。

 以上のような運用のため、実際の調停や審判では私立学校への進学などについて「承諾があったか」争いになるケースが多くあります。裁判所は、明示の承諾がないケースでも「黙示の承諾」があればよいと考える傾向にあり、義務者が受験勉強を支援していたようなケースでは「進学について承諾があった」と認定するケースが多いように思われます。また、例えば、両親が医者で子が進学高に通学している場合の大学医学部への進学など、親の地位・収入・学歴などから「承諾」を認定するようなケースもあります。

 また、学習塾・習い事の費用も、義務者が承諾をしていた場合や義務者の収入・地位・学歴などから負担が相当と考えられる場合には、婚姻費用や養育費を修正する要素になると考えられています。海外留学の費用などについても同じです。

② いつまで支払いが続くのか

 大学への進学については、婚姻費用や養育費の額の修正の他、終期の変更の問題も発生します。家庭裁判所の運用によると、一般的に、婚姻費用(子への扶養料の部分)・養育費については、子が20歳に達するまで(20歳の誕生日の属する月まで)支払うべきと判断されています。しかしながら、大学への進学について「承諾」が認められるケースでは、標準的な大学の卒業時期である22歳の3月まで、養育費などを支払うべきということになります。また、医学部に進学するようなケースでは、24歳の3月までなどとされることもあります。

 なお、大学への進学については、大学の学費の他、通学費用や仕送金なども養育費などの加算の要因になる一方で、子がアルバイト収入を得ることができること、奨学金を受けることができることなどによる、減額方向要素も考慮されることになります。

医療関係費の修正が必要なケース

 医療費も、統計上の平均的な額の医療費は、「養育費・婚姻費用算定表」で算出される婚姻費用や養育費の額に反映されています。しかし、平均的な額を超える医療費が発生するような場合には、婚姻費用や養育費の額の修正が必要になると考えられています。

 治療費や入院費のみではなく、家屋のバリアフリー改造の費用、歯列矯正費用、メガネ代なども医療関係費に入ると考えられています。

その他のケース

 以上の他、生活費を補うための借り入れの返済について、婚姻費用の算出の際に考慮をしたケースや別居時に相手方に無断で持ち出した財産がある場合に婚姻費用の負担額を調整したケースがあります。

 ただし、債務の負担や別居時に無断で持ち出した財産の清算は、本来は離婚時の財産分与で考慮すべきものです。これらを婚姻費用で考慮するケースは例外であると考えられています。

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